
「男の子だったらよかったのに」親にそう言われた女性は、期待に応えようと男らしく振る舞い続けた。だがその先に待っていたのは、心の病だった。まじめで優しい「いい人」ほど、ある日突然心を壊してしまう――その原因とは?※本稿は、加藤諦三『不安をしずめる心理学』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
人はみな好かれたいと思って
別の自分を演じている
「不安を正しく抱くことを学んだ者は、最高のことを学んだのである」と言ったのは、キェルケゴールでしたが、不安という強烈な感情を正しくコントロールできるということは、人間としてもっとも賢い生き方を学んだことになります。
不安を正しく学ぶことは非常に重要な意味がありますので、不安の原因について話をしていきます。
そもそも人はなぜ、自分でない自分になってしまうのでしょうか。
亀は遅く歩いていればいいのです。ウサギと速さを競う必要など何もありません。
人間だけが人の目を気にして、好かれたい、褒められたい、愛情を得たい、みんなから受け入れられたい、と思って自分でない自分を演じるのです。
そして、自分が自分でない自分を演じていることに耐えられなくなっているのが、不安な状態です。
その意味で、不安は自分の意識と無意識とが乖離しているわけですが、またさまざまな症状が身体に表われることもあります。「身体化症状」といいますが、自分でない自分を演じることで、片頭痛や過敏性腸症候群のような症状が身体に出てきたりするのです。
人に見せるために自分でない自分を演じることで、意識と無意識が乖離し、それは身体にまで影響を及ぼすことになるのです。