ステップ2:社会を知る(業界・企業研究、仕事理解)

 自己分析を進めながら、ステップ2の社会を知るために業界・企業研究、仕事理解に取り組みます。「自己分析で自分の強みは○○だと分かったが、志望業界や企業とどう結びつけたらいいか分からない」と悩む学生が多いのですが、これは業界・企業研究、仕事理解が不十分だからです。

 自己分析の内容と志望動機を結びつけるためには、その仕事や業界で本当に必要とされる資質を深く理解すること。

 たとえば商社を志望する場合、大きなプロジェクトを動かしてみたいなどと、商社の仕事に漠然とした憧れを抱いていることが多いものです。しかし、憧れだけでは企業を納得させられません。商社で実際に働いている人に直接話を聞き、「必要な能力や資質」「こういう人が向いている」「こういう特性がないと厳しい」といった生の情報を収集することが重要です。

 実際に活躍している人の声ほど、現実を写している情報はありません。

 自己分析で理解している自分の強みが、本当にその仕事で求められる資質と合致するのかという検証作業が業界・企業研究、仕事理解の核心です。憧れが強い人ほど入社後「思っていたのと違う」とギャップを感じがちですが、それを防ぐためにも憧れから一歩出て、現実的に職業を理解しなければならないのです。

 会社が何を知ってほしいのか、何に挑戦しようとしているのかを知らずに「御社で貢献できます」とは言えません。つまり、業界・企業研究、仕事理解は、「自分の強みや価値観が、どんなフィールドで活かせるのかを検証する作業」なのです。

効果的な業界・企業研究の進め方

「何から始めたらいいか分からない……」という人も多いですが、最初から完璧を目指す必要はありません。以下の3ステップで段階的に進めていってください。

 1. 興味のある分野から始める
 業界・企業研究は、まずは自分が興味を持っている分野から始めましょう。まずはインターネットで業界の概要を調べ、企業のホームページやニュースリリースに目を通し、インターンシップにも積極的に申し込みましょう。たとえ選考で落ちたとしても、その過程で業界理解が深まります。

「知らない業界を知ること=自分の可能性を広げること」です。興味があるならば、まず行動。エントリーに挑戦してみてください。

 2. 企業説明会やセミナーへの参加
 定員のないウェブセミナーや企業説明会にもどんどん参加しましょう。実際に話を聞いてみることで、「思っていたより面白そう」「想像とは違っていた」といった発見があり、選択肢が広がります。重要なのは、勝手に固定観念や価値観で視野を狭めないことです。話を聞くことで、興味が湧くことも多いため、最初の段階では「広く浅く」で構いません。

 3. 基礎知識を身につけてから社会人訪問
 業界や企業への知識がある程度身についたら、実際に企業で働く人に会いに行きます。最低限、当該企業の事業内容、業績、企業理念を理解し(できれば、競合他社も知っていると、競合他社の情報までも引き出せて有利です)、最近のプレスリリースも確認しておきましょう。

「知らないから教えてください」という姿勢では、相手に失礼ですし、得られるものも限られます。自分の中で聞きたいことがふつふつと溢れている状態で訪問することで、意味のある質問ができ、より深い情報を得ることができます。調べれば調べるほど知りたいことが出てくるはずです。会いに行く前の下準備が、社会人訪問の質を大きく左右します。

社会人訪問も選考の一部

 注意すべきは、最近の社会人訪問は、人事部門と連携して行われるのが一般的だということ。社会人訪問に特化したマッチングサービスは基本的に全て人事とつながっているため、軽い気持ちで訪問すると選考に影響する可能性があります。

 つまり、社会人訪問の時点で選考が始まっているのです。だからこそ、「準備して臨むこと」と「人としての礼儀」はセットで心がけましよう。

 とはいえ、準備不足だからと尻込みして訪問に踏み切れないようでは本末転倒です。最低限のことを調べたら、「走りながら」でいいので、できるだけ多くの人に会うことが重要です。

 企業が求めているのは、業界全体を見たうえで、多くの選択肢の中から、その企業を志望している理由を明確に説明できる学生です。「御社しか受けていません」というのはありえません。そのためにも、受ける業界は最初から絞りすぎないことが重要です。志望業界の周辺業界、志望企業の取引先、似たような業務をしている別の業界にも目を向けるなど、視野を広げるように意識してみてください。

 広く知ることからはじめ、深く語れる状態を目指すことが、志望動機の説得力に繋がります。