2025年7月、早くも2027年3月卒業の学生の就職活動がスタートしている。近年、就職活動はますます早期化・長期化の様相を呈している。そんな中で、17年連続売上No.1を更新し続けている『絶対内定2027』シリーズは、不安な就職活動におけるお守りのような一冊だ。激変する就職活動にどう取り組んでいけばよいのか、本書の共著者であり、キャリアデザインスクール・我究館館長の杉村貴子氏に、就活生とその親が絶対に心得ておくべきポイントを聞いた。本稿では、納得内定のために必要な就活のステップを整理してもらい、ステップ1~3についてその方法を伝授する。(取材・文:奥田由意、撮影:池田宏、企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

「なんでうちの子が不採用に…」“優秀で高学歴な学生”でも面接で落ちる理由・ワースト3撮影/池田宏

成功する就職活動
3つのステップ

 効率的で成功する就職活動には、明確な3つのステップがあります。

 ・ステップ1:自分を知る力(自己分析)
 ・ステップ2:社会を知る力(業界・企業研究、仕事理解)
 ・ステップ3:伝える力(面接など、言語化しアウトプットする練習)

 この3つのステップを順序立てて進めることで、どのような学生でも“必ず”成果を出すことができます。まずは、すべての基盤となる「ステップ1:自分を知る力(自己分析)」から詳しく解説します。

ステップ1:自分を知る力(自己分析)

 自己分析は就職活動の土台です。ここを疎かにすると、どれだけ企業に詳しくなっても、面接の練習をしても、表面的な言葉しか出てこず、納得のいく結果には繋がりません。

 就職活動とは、「自分という人間が、社会のどこで、どんな役割を担えるのか」を見つけていく作業です。だからこそ、第一歩は、「自分がどういう人間なのか」をきちんと理解していることが必要です。

 また面接は、一見すると会話のように思えますが、企業は「うちの会社に馴染めるか」「この人に仕事を任せて大丈夫か」「本当にうちに入りたいのか」ということを、面接という会話を通じて“確認”しているのです。

 これらの問いに対して、面接では、一貫した言葉で、相手が納得するように「自分」を語れなくてはなりません。企業に対して自分が伝えたいことを話すというより、企業の確認したい内容に対して、相手を納得させることが求められます。そのためには、自己分析は、「自信を持って答えるための準備」であり、徹底的な自己理解が不可欠です。

 自己分析の最初のステップは「キャリアの棚卸し」です。幼少期から現在まで、思い出せる限りの自分史を詳細に書き出す「ライフチャート(充実度年表)」の作成から始めます。印象的だった出来事と、心が動いた瞬間、挫折、衝突、誰かの言葉で救われた経験など、全てが「今の自分をつくった材料」になります。

 この作業を粗くしてしまうと、その後のすべてのプロセスに影響が出てしまいます。大切なのは、キレイな話を書くのではなく、事実に基づいた自分の感情を丁寧に書き出すことです。そのすべての要素が面接で語るエピソードの素材となります。

 また、多くの学生が「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)=大学時代の話」でなければならないと思い込んでいますが、企業が知りたいのは、「今のあなたの価値観」であり、それがいつ、どのように形成されたかです。

 つまり、大学より前の話でも問題ありません。現在の自分を作っている価値観やコアとなる部分を理解すること「なぜそのような価値観を持つに至ったのか」を説明するためには、物心がついたばかりの時期まで遡ることさえあります。

チーム戦としての自己分析

 就職活動は「個人戦」ではなく「チーム(団体)戦」です。というのも、自分の中だけで自己分析を行うと、どうしても「自分で認識していること」「自覚していること」だけが基になり、表面的な分析になってしまいます。しかも、一回出したアウトプットで満足してしまいがちです。

 自己分析はまず自分で書き出すことが大切ですが、その次のステップとして、家族、友人、先輩、キャリアセンターの職員、就職支援サービス、私達のような就活塾のコーチなど、様々な他人の力を借りながら進めていくことが重要になります。適宜AIを壁打ち相手としてみてもいいでしょう。

 何度も説明をしている過程の中で、自己理解は深まっていくものです。自分にとって当たり前のことでも、他の人から見ると「疑問」に感じたり、「すごい」と評価されることもあるのです。

 たとえば、保護者は子どもが自分で自覚している強み以外にも、良さや改善点を理解しているものです。「あなたは小さい頃から、こういうことが得意だった」「こういうところがあなたのいい所」と示唆してあげると大きな助けになるでしょう。

 我究館では、6人程度のグループで、学生どうしで繰り返し自己分析の壁打ちを行い、互いにフィードバックし合っています。「なぜそう感じたのか」「この時の感情を教えて」「もっと詳しく聞かせて」といった質問が飛び交うことで、一人では気づけない密度の濃い、深い自己理解に到達できます。

 また、自己分析は一度で完成させるものではありません。多くの学生が、就職活動で初めて自己分析をしたと思いますが、就職活動のスタート時に一度行うだけではなく、継続してブラッシュアップしていってください。段階的に詳細に分け入る中で、他者からのフィードバックを積極的に採り入れる。この反復作業が大事なのです。

 ここで絶対に避けたいのが、他人との比較です。他人と比べて劣っているのではないかと思うのはまったくの無駄です。大切なのは、「他人軸」ではなく「自分軸」です。

 自分の軌跡をしっかり言語化し、志望企業が最も聞きたい“志望動機=何がしたい・何ができる”に繋げて話すことに集中してください。自己分析とは、「自分の人生の主語」(自分の人生を動かしている一番大きな要因――価値観や自分自身のコアとなる部分)を確認する作業です。自分の人生に向き合い、胸を張って自分自身について語ること。それが自己分析のゴールであり、就職活動の第一歩なのです。