さらに、その影響は精神的な不調にまでおよびます。不眠や不安、やる気が出ないなどの症状は、一見、心の問題だと捉えられがちですが、その多くが自律神経と関係しています。いずれにしろ、症状が軽いからといって何もせずに放置すると、深刻な病に繋がりかねません。
自律神経は
木曜日が一番乱れる
私が所属する順天堂大学の研究チームで、主にビジネスパーソンを対象に「1週間の自律神経の働きの推移」を計測した研究があります。そのデータから、1週間のうち、木曜日が最も自律神経の働きが低下していることがわかりました。
疲れやストレスは自律神経を乱します。例えば、仕事が忙しくて不規則な生活が続くと、日中は活動し、夜は眠くなるという「体内時計」のリズムが狂って自律神経のバランスが崩れたり、自律神経の働き自体が弱くなってしまいます。ですので、普通に考えると、月曜日から疲れが徐々に蓄積されていき、疲れのピークは金曜日になるはずです。
ところが、自律神経が一番乱れるのは金曜日ではなく木曜日です。金曜日はむしろ、自律神経の数値が回復します。それはなぜかというと、金曜日は翌日が休日だから。「明日は休みだ!」と思うだけで、自律神経の状態はよくなるのです。つまり、ちょっとした思考の変化で自律神経は上向きます。
ですから、自律神経が乱れやすい木曜日は「リセットデー」として、なるべく休息をとること。早く仕事を切り上げて食事に行ったり、映画を観たり、自分の心がよろこぶことをするといいでしょう。これは休み明けの「月曜日が憂鬱」という場合も一緒です。前の休日に気分が上がる場所へ出かけたり、楽しい経験をしたりすることで自律神経が整いやすくなり、快適に月曜の朝を迎えることができます。
自律神経による不調・症状(1)
痛み
全く異なる作用をもつ交感神経と副交感神経は、どちらか一方が優位になるよりも、「1:1」のバランスで働くほうが理想です。このバランスが交感神経優位に傾くと、不快な症状が出始めます。その症状のひとつが「痛み」です。自律神経と痛み、一見、繋がりがないように思える両者ですが、どのようなメカニズムで痛みは生じるのでしょうか。
事の発端は、イライラしたり緊張したり、ストレスを感じることから始まります。すると交感神経の働きが高まり血管が収縮し、血流が悪くなります。これが一時的なものならまだいいのですが、緊張状態が長く続くと交感神経が常に高いままで、通常は夕方から夜にかけて優位になる副交感神経がうまく働かなくなってしまいます。血管は収縮したままとなり、長時間にわたって血流が滞ることに。そうなると、体に酸素や栄養素が行き渡らず筋肉はこわばり、肩こりや腰痛、頭痛、関節痛などの痛みが生じやすくなります。