人口減・高齢化が進む日本で、小売業が「稼げない」のは必然である。元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏は、GMSモデルの限界を指摘し、セブン&アイ・ホールディングスがイトーヨーカドーを切り離せなかった背景に、ガバナンスの弱さと意思決定の遅れがあったと語る。その対極にあるのが、アパレルのファーストリテイリング(ユニクロ)や家具のニトリ、食品スーパーのロピアといった「製造小売業(SPA)」だ。特集『高岡浩三の「企業の通信簿」』の本動画では、自ら作り、自ら売ることで高い利益率と急成長を実現するこの最強ビジネスモデルの秘密と、日本企業が低利益体質から脱却するための処方箋を提示する。

人口減の現実に小売業界が適応できない理由
SPAだけが高利益・高成長を実現しているのはなぜか

 日本の人口減・高齢化という逃れられない現実に小売業は苦戦している。にもかかわらず、多くの企業はいまだ古いビジネスモデルに固執し、抜本的な変革に踏み出せていない。

 一方で、ユニクロやニトリ、ロピアは“自ら作り、自ら売る”という「製造小売業(SPA)」モデルで高い利益率と成長を実現している。

 現場の顧客データが即座に商品開発へと反映されるこの仕組みこそ、稼ぐ企業と停滞する企業を分ける決定的な差だ。ではなぜ、セブン&アイ・ホールディングスはイトーヨーカドーを切り離せなかったのか――。元ネスレ日本CEO・高岡浩三氏が、ガバナンスと経営判断の本質からその理由を解き明かす。

高岡浩三(たかおか・こうぞう)
1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。30歳で同社史上最年少部長に昇格。「キットカット」受験キャンペーンを成功させ、受験生の定番のお守りになるよう普及させた。2010年よりネスレ日本代表取締役社長兼CEO。オフィス向けの「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ、新たな市場を開拓。20年3月、同社を退社。サイバーエージェント社外取締役。主な著書に『企業の通信簿』『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)、『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA/中経出版)、『世界基準の働き方』(PHP研究所)など。