一体感なき親族経営が生む“静かな崩壊”…株式分散・経営の混乱を防ぐ3つの実践策とは写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

持続的発展を支える一族の安定的な株式保有

 ファミリーガバナンスは、ファミリービジネスの強みを伸ばし課題を抑制するための仕組みである。第3回では、その全体像と実践方法、企業の取り組み事例を紹介する。

 ファミリービジネスの持続的な発展には、ファミリーが安定的に株式を保有し、円滑な意思決定をサポートすることが必要である。そして、事業とファミリーの適切な距離感を保ちながら、ファミリーが一体感を維持し、経営を支えることが肝要である。第一世代ではファミリーメンバーが少ないが、世代を重ねるにつれてファミリーメンバーは増える。関係性は希薄になり、相続によりファミリー内での株式の分散も進む。経営に関わらないファミリー株主は、株主として経営を支える意識が低く、株式を保有する理由を見いだせず、さらには事業への関心や影響力も失われる傾向にある。その結果、ファミリービジネスの強みが失われていくこととなる。

 これは、前回紹介したスリーサークルが離れていくプロセスであり、それによりお家騒動やガバナンスなどの課題も表面化しやすくなる。これらの課題を防ぐための取り組みが、ファミリーガバナンスである。

 ファミリーガバナンスの全体像は図表に示したとおりであり、具体的な取り組みは大きく二つに分類できる。一つは、ファミリーの一体感を醸成するための取り組みだ。もう一つは、一族間で合意されたルールを明文化し、その実効性を高めるための取り組みである。例えば、親族会や新年会のような懇親イベントが前者に当たり、家訓やファミリー憲章といった一族のルールを定めることが後者に当たる。