他の従業員がカスハラなどでメンタル不全に追い込まれるようなことがあれば、職場の雰囲気も穏やかなままでいることはありません。

 次は自分にも同じことが起きるのではないかと不安を感じれば、仕事に集中することは難しくなりますし、またその不穏な雰囲気は職場全体を覆い、安心して働ける環境とは遠く離れたものになるでしょう。

 今労働者は売り手市場です。就職氷河期であれば、多少条件が悪くとも働けるところがあるならと妥協して職場を選ぶ人も多いですが、今は違います。少しでも条件の良いところを探します。

人材確保のためにも
カスハラ対策は必須

 マイナビキャリアリサーチLabが行った2023年卒大学生就職意識調査※によると、企業選択のポイントは「安定している」が最多となりました。

 企業に安定性を感じるポイントとしては、「福利厚生が充実している」、「安心して働ける環境である」が上位2つにきています。

 企業の前提はゴーイング・コンサーン(going concern)です。将来にわたり、継続的に事業を継続することです。

 企業が継続することの条件の1つが採用です。そこで働く人がいなくなれば、その企業は市場に対してどんなに価値を提供していようとも継続することはできません。

 安心して働ける環境とは、心理的安全性が担保されている、安全配慮義務が果たされているといったことが挙げられます。

 誰も好んでカスハラにさらされなければいけないリスクを冒して働きません。危険を感じることなく気持ちよく働ける職場はいくらでもあります。

 今後、カスハラ対策を含め、その他のハラスメント対策が十分にとられないような企業は、人材を採用することが極めて難しくなります。

 企業がカスハラ対策に取り組むことは、将来の人材確保の視点からも必要なことなのです。