では企業としてカスハラ対策で安全配慮義務違反に問われないためにどのような対策がとれるでしょうか。

(1)カスハラ対策マニュアルの作成

 企業としてどのようにカスハラに対応するのか、具体的な方策だけでなく、企業としてどのようにカスハラに向き合うのか、その方針も作り、共有することが大切です。

(2)従業員に対するカスハラ対策についての教育

 マニュアルを作成して終わりではなく、そのマニュアルが正しく理解され、運用されるように従業員に対して教育を実施します。

 また、特定の従業員がカスハラ被害にあっていないか、問題を抱え込んでいないかなど、組織としてチェック、管理、ケアを怠らないことも必要です。

 また、どれだけカスハラ対策を講じたとしても、メンタル不調をきたす従業員はいます。そんな時に、心身の相談をできる心理カウンセラーなどを配置することも企業がとれる施策の1つです。

カスハラ対策を怠ると
生産性が大きく下がる

 企業がカスハラ対策をしなければならない2つ目の理由は、カスハラ対策を講じないことで生産性が下がる可能性があるからです。

 企業が十分なカスハラ対策ができていなかった場合、どのようなことが起こり得るでしょうか。

 従業員がメンタル不全になれば休職、離職といったことが考えられます。

 今はどこの企業も人手不足です。できる限り少ない人数で業務を回したいと考えているところがほとんどでしょう。

 少数精鋭で高い利益率を求める狙いがある一方、単純に売り手市場のために採用ができずにいる企業も少なくありません。

 そんな状況の中、従業員が1人でも離脱することは生産性を大きく下げることにつながります。

 また仮に安全配慮義務違反を問われ、労働裁判が始まれば、裁判に膨大な時間と労力を割くことになります。そうなれば生産活動に割ける人数は減り、ますます生産性を下げることになります。