
3つの赤を使った柳川演出
止め絵の美的センスに脱帽
赤ちょうちんの赤と、トタンの赤と、バッグの赤。それぞれ色が少し違っているのと、ドラム缶の緑によってバッグの赤がきれいに浮き上がって見える。3つの赤のバランスのセンスがとてもいい。
振り返れば第37回。のぶが次郎と見合いした回の赤も美しかった。
止め絵のセンスが美しい、セット撮影を熟知したベテラン・柳川強演出。
のぶは素直にバッグを受け取る。ちょっと擦り傷のついた、手垢もたぶんついたむき出しの嵩の心を。
「若松のぶさん…僕は朝田のぶの頃からあなたが好きでした」
「どんなに怒られても僕はそのまんまののぶちゃんが…どうしようもなく好きだから。これからもずっと僕はあなたを…愛しています」
嵩の渾身の告白のあと、のぶのアップに主題歌ピアノアレンジバージョンの劇伴が流れる。
「やっと言えた」とそれだけ言うと嵩は「じゃっ」と踵を返す。
ここで押さずに引くことで、意地っ張りののぶの気持ちが動いた。
「えっ」
ここで「たっすいがはいかん」が出る。引くなということだ。
走って「好きや嵩の二倍嵩のこと好き!」と抱きつく。そこでバッグの蓋が開いているのも、心を開いた暗喩であろうか。
そのとき闇市の人たちが全員後ろを向いて静止している。ともすれば悪目立ちし、雰囲気をぶち壊しにしかねないのに、気にならない。カメラマンの撮り方も巧い。エキストラの配置も巧い。
柳川演出のもと、スタッフが一丸となって最大の見せ場を素敵に描こうとしているのを感じる。狭いセットでもすてきに撮れる見本であった。いつもこうであってほしい。
のぶが嵩への気持ちに気づいてやれやれ。それでもやっぱり気になるのは、次郎のことだ。次郎のことは吹っ切れたのだろうか。亡くなってからそんなに時間がたっていないような気がするのだが。
いま昭和21年で、次郎が亡くなったのは終戦後。1年から2年くらいだろう。3周忌(亡くなって満二年)まではまだだと思うのだが……。