史実の暢さんの告白は
なかなか大胆だった
そんな次郎の家に朝田家が集合し、嵩とのぶの話をしているシュールな、いささか罰当たりな、この感じ。戦後、まずは生きることを重視する考え方なのだろうか。蘭子が言うように、亡くなった人の分、生きていくために、次郎は家を彼女たちが使うことをあの世からあたたかく見守り、嵩にものぶを頼みますと語りかけているのだろうか。
この家もバッグと同じく、象徴である。死者が生者を見守っている象徴なのだろう。
「どんなに思うても もう気持ちをつたえることはできんがです。戦争で死んだ人の思いをうちらあは受け継いでいかんといかんがやないですか。人を好きになる気持ちとか。そんなに好きな人に出会えたこととか なかったことにしてほしうないがです。なかったことらあにせんといてください」
蘭子が亡くなった次郎の家で食卓を囲みながらこう言ったことは、次郎をはじめとして死者の思いを汲んでのことなのである。いいふうに考えたらそうなる。
やなせたかしの『アンパンマンの遺書』のなかの「ハンドバッグと西瓜」によれば、暢は「やなせさんの赤ちゃんが産みたい」と告白したそうで、なかなか大胆。ドラマだとこのセリフを取り入れるのが難しかったのだろう。
それに匹敵するパワーワードを考えた結果、「好きや 嵩の二倍嵩のこと好き!」になったと推察する。何かと負けず嫌いののぶにピッタリではある。
