理由を知ると納得しかない…「30%という数字」が社会を激変させるワケ【マンガ】『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第71回は、コロナ禍が変えた「中高生の生徒会活動」について考える。

オンライン授業の“思わぬ副産物”

 龍山高校を通信制高校にしようという理事長代行・龍野久美子の提案に対して、校長の奥田義明は対面でのコミュニケーションの意義を力説する。だが、龍野は「直接会って人と触れ合う価値など今の若い人たちにとってなんの意味も持たない」と反論するのだった。

 コロナ禍以降、Zoomなどのオンライン会議システムを積極的に活用するようになったのは社会人だけではない。2020年に中学3年生だった私にとっても、Zoomはオンライン授業の必需品となった。むしろ通常の授業が回復してから、思わぬ副産物が現れたのだ。

 当時、私は中学の生徒会長をしていた。通常の下校時間が過ぎた後も夜の8時や9時からZoomでミーティングを開き、新規企画やルールの改正など多くの議論を交わしたのを覚えている。今思うとかなりブラックな職場(?)だ。

 最も大きな副産物、それは他校との交流だ。生徒会というと1つの学校内の活動を思い浮かべる人が多いと思う。だが、実は地域単位での生徒会同士の交流会が全国各地に存在し、定期的に情報交換や共同企画などを行っている。

 コロナ禍で対面での交流ができなくなり、自然消滅する団体も出てくる中で、オンラインで交流を続ける団体がちらほら出てきた。実際にどこかの学校に足を運ぶという物理的な距離がなくなった結果、興味深い現象が起きた。

 地域単位のみならず、日本全国に対象を拡大する団体がたくさん設立されたのだ。

「直接会って人と触れ合う」ことの意味

漫画ドラゴン桜2 9巻P159『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 私もそういった「オンライン団体」の代表を務め、2022年の参議院選挙の際に高校生が政治を語り合うイベントや、「人狼」などのゲームをして交流するイベントなどを開催した。

 だが、マンガ本編で龍野が言うように「直接会って人と触れ合う価値など今の若い人たちにとってなんの意味も持たない」わけではない。確かに、交流できる学校の幅は格段に広がった。香川の学校で行われている活動を自校に取り入れたこともあったし、海外の高校生との交流も簡単にできた。

 しかし、コロナ禍で新規に設立された生徒会交流団体の多くは、2〜3年以内に消滅していった。

 オンラインでの交流は総じて「広く浅く」になりがちだ。給料がもらえるわけでもないこれらの活動の持続性は「楽しいかどうか」にかかっている。全国規模であるがゆえに運営メンバー同士の絆が生まれづらく、理念や熱意を引き継ぐことが難しかったのだろう。

 オンラインで交流することのデメリットは、セレンディピティ(偶然の出会い)が生まれにくい点だ。Zoomのシステム上、進行がきっちりと決まっている交流会では、ちょっと立ち話をしたりといったことが難しい。同時に複数人が喋ったり、会話に割り込んだりできないからだ。

 Zoomをはじめとしたオンライン会議システムは、時間的・空間的・立場的に会えるはずもなかった人との出会いを可能にした。特に、出会いの幅が限られる中高生にとっては、魅力的なツールだ。

 とはいえ、それは「直接会って人と触れ合う」価値を否定したわけではないと思う。別にこれは若者に限った話ではないだろうが、自分が意図していない人との予期せぬ出会いのためには、直接会うことが不可欠なのだ。

漫画ドラゴン桜2 9巻P160『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 9巻P161『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク