多くの日本企業がDX推進の過程で「経路依存性」の課題に直面している。特に、取り組みが進む企業ほど、その問題は「人材・スキルの不足」という形で顕在化する。こうした、過去の仕組みや慣習に縛られて変革が進まないという根深い課題を解決するためには、「人起点」での変革が重要である。そして、変革をリードしていくのはCIOの役割であり、DXの成否もCIOのリーダーシップにかかってくる。『Leading Transformation――チェンジリーダーが挑む「人起点」のデジタル変革』を上梓したRidgelinez執行役員Partnerの水谷広巳氏に、DX推進に欠かせない「人起点」の取り組みと、組織変革の鍵を握るCIOの重要性についてお聞きした。

「人起点」アプローチ――人と企業を結びつけて変革を起こし、新しい価値を生み出す〈PR〉

「人」を起点に、
すべての変革を発想する

 Ridgelinezが提唱する「人起点」について解説するにあたり、その背景にある当社の立場について簡潔に触れておきたい。

 Ridgelinezは、富士通グループが2020年に設立した総合プロフェッショナルファームであり、創業当初から「人起点」という視点を掲げ、現場起点の変革支援に取り組んできた。

 では、我々が提唱する「人起点」とは、具体的にどのような考え方なのだろうか。

 我々は「『人』を起点に、すべての変革を発想する」という信念のもとに、人と社会の「変わらない未来」を捉えながらも「変わり続ける未来」を創造すべく、チェンジリーダーとともに変革を戦い抜く。

 Ridgelinezにとっての「人起点」とは、ビジネスを変革し、新しい価値を生み出すための考え方である。この考え方では、「エンドユーザーのことを深く理解していること」と、「クライアント企業のビジネスを深く理解していること」の両方が鍵となる。

「人起点」のアプローチを取ることで、企業は人と企業を結びつけ、変化を起こし、これまでになかった新しい価値を生み出すことが可能となる。つまり、「人起点」は、人(エンドユーザー)と企業(クライアント)の双方ともが誰よりも深く理解し、人と企業をつないで変革と新しい価値の創造へと導くための指針である。

 そして、「人起点」をもとに変革を進めるチェンジリーダーの伴走者を務めることが、テクノロジー時代の変革創出企業としてのRidgelinezの役割だと考えている。

 こうした考えをもとに、クライアントには「人起点によるデジタル変革」を提唱しているのだ。

 企業が組織やビジネスの変革を進めるにあたって行う「人起点によるデジタル変革」とは、人を中心に据えるアプローチのことを指しており、下記の5つが挙げられる。

(1)変革に取り組む明白な理由を示す
 経営層から変革の宣言を行い、従業員に対して強い意識づけを行う

(2)企業としての新しい目的を設定する
 明確なパーパスを制定し、自社が向かう方向性を明確にする

(3)対話を通じて企業の目的と従業員の原動力を共鳴・共感させる
 従業員との対話を通じて、パーパスを浸透させ、共鳴関係を構築し、行動変容を促す

(4)新しい目的や変革に熱意のある現場が行動変容できる全員参加型の環境を作る
 新たな施策をすぐに実践できる環境を作り、活動やその成果がすぐに共有できるような全員参加型の環境を提供する

(5)テクノロジーを活用した変革の加速
 企業のIT・デジタルの力を最大限引き出し、戦略施策をアジャイルに実行する

 つまり人起点の変革とは、明確な理由と目的を示し、対話によって従業員の共感を引き出し、行動変容の土台を築くことから始まる。さらに、現場がすぐに動ける環境を整え、テクノロジーの力でその行動を加速させる。

 こうしたアプローチによって、技術やプロセスの導入がより効果的になり、持続可能な成長の実現が可能となる。