今回の路線価上昇を牽引した具体的な地域を見ていくと、その背景にある需要の多様性が浮き彫りになる。上昇率上位をランキング形式にすると、本年度の第1位は「長野県白馬村」であった。上昇率は32.4%と驚愕の数字である。スキーリゾートとして世界的に知られる白馬村は避暑地として夏季の観光客増加も相まって、不動産価格が急騰している。特に外国人富裕層による購入が顕著であり、ニュースでも話題だ。
リゾート地の国際的な評価が、地方の路線価を大きく押し上げる要因となっており、第2位の「北海道富良野市北の峰町」も同様の要因により30.2%も上昇した。富良野のスキー場隣接エリアでは、ホテルやコンドミニアムの建設需要が活発化しており、インバウンド需要が特定エリアに集中している様子がうかがえる。
第3位には都内でも人気観光地の台東区浅草がランクインした。浅草は外国人観光客の回復と、商業施設の需要増加が直接的に路線価の上昇につながっている。また、マンションの需要も好調で人気の居住エリアである点も上昇率に影響し、29%の増加となった。
4位以降は古い町並みが美しく、国内外から多くの観光客が訪れる岐阜県高山市(28.3%増)、第5位には都内でも意外なエリアと言える東京都足立区千住がランクインした。足立区千住は26%の上昇である。台東区や足立区は都心に比べて土地価格が手頃でありながら、交通の利便性が高く下町情緒もあり、暮らしやすいという特性を持つ。特に足立区千住は、転入者の増加が続いている。
自然災害で甚大な被害
路線価が最も下落した場所
路線価が国内全体として上昇にある中で、例外的なエリアも存在する。2024年1月1日に発生した能登半島地震で甚大な被害を受けた、石川県輪島市の「朝市通り」だ。
この地点は、路線価において16.7%もの大幅な下落となり、全国で最大の下落率を記録した。観光地として国内外から多くの人々を引きつけていた「朝市通り」が、地震によって壊滅的な被害を受けた影響は大きく、過疎化も著しいエリアのため数字として如実に表れた形である。
現在、輪島市を中心に能登半島は再建に向けた懸命な努力が進められている。このような自然災害が地方の不動産市場に壊滅的な影響を与えうる、という厳然たる事実を突きつけられる結果となった。
特に、観光業に依存する地域や、過疎化が進行する地域においては、大規模な自然災害が投資・運用にとって「暗い影」となるおそれがある。こうしたエリアの復興は国が主体となり、支え続ける必要があるだろう。