路線価上昇が
相続に与える影響は

 今回の路線価大幅上昇は、不動産を保有する方、特に相続対策を検討している方々にとって、看過できない情報であろう。これまで、地方や郊外に不動産を所有している場合、相続税の基礎控除額内で収まり、相続税対策を講じる必要性が低いケースも少なくなかった。

 しかし、インバウンドの影響なども受けながら路線価の上昇は続いており、都市部から離れた地域や、観光客増加の恩恵を受けた地方都市の不動産であっても、相続税評価額が上昇し、新たに相続税の課税対象となる可能性が現実味を帯びている。対策を怠れば、思わぬ税負担に直面するため、細心の注意が必要だ。

 特に相続税で注意すべきは「納税資金」である。不動産の評価額が急上昇しても、売却や不動産の有効活用を行わない限り、手元にある現金が増えるわけではない。相続財産の大部分を不動産が占める場合、相続税の納税資金が不足し、「資金難」に陥るリスクが拡大する。場合によっては、大切な不動産を売却せざるを得ない状況に追い込まれる可能性すらある。納税準備を早くから始める必要があるのだ。

路線価は今後も上昇の見通し
地価上昇時代を生き抜くポイント

 現在の経済状況と社会情勢を鑑みると、今後も円安が続きインバウンド需要が見込まれるため、路線価は上昇基調を続けると予測される。このような「地価上昇時代」を賢く生き抜き、相続税の負担を軽減するためには、戦略的な対策が不可欠である。

 もはや相続税対策は、東京23区内の富裕層や都心部に不動産を持つ人に限られた話ではない。今回の路線価公表で明らかになったように、地方都市や郊外であっても、特定の地域では驚くほどの大幅な路線価上昇が起きている。

 自身の居住地や所有不動産の所在地に関わらず、すべての人が相続対策を「自分ごと」としてとらえ、早急に検討を開始すべきだ。

 一般的なサラリーマン家庭でも、持ち家や地方に残していた土地、預貯金で相続税の基礎控除を超えるケースは珍しくない。特に都市部にマイホームを所有している場合、今回の路線価上昇によって、思わぬ相続税が発生する可能性が高まっている。漠然とした不安を抱えるのではなく、具体的な資産把握と対策検討に乗り出すべきである。