台湾企業のTSMC(台湾積体電路製造)は九州の熊本に第一工場を建設した。TSMCは半導体受託生産の世界最大手企業である。TSMCの進出を機に、「熊本シリコンアイランド」に半導体関連産業が集結している。九州経済産業局によると、2021(令和3)年4月以降、九州への半導体関連の設備投資は100件を超え、投資総額は5兆円規模になった。2024(令和6)年12月にはTSMCの量産出荷が開始された。
2022(令和4)年8月、日本企業の「ラピダス」が設立された。次世代半導体の量産を目指すラピダスは、2023(令和5)2月、北海道千歳市に工場建設を決定した。総投資額は5兆円に及ぶ。千歳市周辺は、半導体関連投資に盛り上がっている。
日本政府は、内需により国産半導体サプライチェーンを構成して、世界の半導体市場に打って出る戦略を描いている。ラピダスの北海道進出を、そのための最初の一手と位置づけている。そして、経済産業省が堂々と補助金を出すことができる状況を生み出している。
熊本に進出するのは、TSMCという台湾企業である。なぜ、外資を導入するのか。言うまでもなくそれは、日本の半導体産業が弱体化しているからである。最先端の技術を持つ台湾やアメリカの企業と、共同で事業を行う必要があるということである。
純国産企業が目指す半導体
最先端「2ナノラピダス」
それに対して、北海道は「ラピダス」という純国産企業の半導体投資を起点としている。そのラピダスの生産が軌道に乗るのかどうか、専門家からは厳しい見方が示されている。ラピダスが生産を目指しているのは「2ナノラピダス」という半導体だからである。
1ナノメートルは10億分の1メートル。「2ナノラピダス」は、10億分の2メートルの回路線幅で、人工知能(AI)や自動運転車などに使われるという。いわば最先端の半導体で、世界中のどの企業も量産化には成功していない。
「2ナノラピダス」は、日本がこれまで生産してきた半導体に比べるとはるかに高度なもの。いわば「三段跳び」のような高度な技術を必要とする。それを可能にするためには、人材が欠かせない。