半導体の人材募集をしたところ、応募者の多くは50代から60代だったという。若い人が育っていないのは、半導体産業が弱体化をたどっていたからである。電力、水を提供できるインフラが十分かどうかも懸念される。

 一方日本は、半導体をつくる設備などの製造基盤ではある程度強さを持っている。この追い風を活用することができれば、新しい風が日本に吹いてくる。

「発展途上国の特権」で
発展を手に入れた中国

 実は、経産省が半導体産業に補助金を出すことは微妙なポイントである。どういうことなのか。簡単に説明しよう。

 現在の国際貿易は、WTO(世界貿易機関)に則ったルールで行うことになっている。1995(平成7)年1月1日に発足したWTOには、2025年現在、166の国・地域が加盟している。

 WTOは、政府が自国の企業だけを優遇することを認めていない。公正の原則に反するからである。自国も外国も待遇を同じにする。それが「公正」「内外無差別」ということである。半導体の例でいえば、外国の企業に対しても補助金を出さなければならない。補助金政策の下で輸出力を強化すると、他の国は迷惑をする。WTOはそれを厳しく監視するシステムになっていた。

 ところが、2001(平成13)年12月に中国がWTOに加盟して以降、状況が変わってきた。当時、中国のGDPは世界第6位だった。にもかかわらず、「発展途上国の特権」を得て、WTOに加盟した。「特権」の下での自由貿易が、中国経済の発展に大きく寄与したことは想像に難くない。

 しかし現実問題として、中国の「国家資本主義」が膨張して、米中の決定的な対立を引き起こした。「経済安全保障」の名のもとに、自由貿易のタガが外れた。半導体のサプライチェーン見直しのために、アメリカも自国企業に多額の補助金を出すようになった。