高市政権「ガソリン減税」実現の難題“消える1兆円”、道路補修の費用は誰が負担するのか?自民党総裁選で勝利し、笑顔を見せる高市早苗氏 Photo:EPA=JIJI

難航の与野党協議、新政権で動き出すか
脱炭素や自動車産業の将来も左右

 物価高への不満は参議院選挙での与党敗北、石破首相の退陣表明へとつながった要因の一つだが、10月4日の自民党総裁選で勝利し新首相になる見通しの高市早苗氏の政権の枠組みがどのようなものになるにせよ、新政権にとって物価高対策は当面、喫緊の課題だ。

 少なくとも、揮発油税(ガソリン税)に上乗せされている旧暫定税率(1リットル当たり25.1円)の廃止は、与野党間で既定路線となっており、高市氏も総裁選の議論でも家計支援の一環で廃止に取り組むことを掲げている。

 野党はすでに、11月廃止を掲げて7党(立憲、維新、国民、共産、参政、保守、社民)共同で8月に「ガソリン暫定税率廃止法案」を衆院に提出しており、廃止に応じる姿勢の自民、公明与党との協議もこれまで5回、行われてきた。

 だが代わりの財源を巡る議論で与野党の溝が埋まらないままだ。

 自公両党と立憲、維新、国民、共産の各党間で7月末に交わされた合意文書では、「財源確保、流通への影響、地方財政への配慮等の課題を含め、すみやかに与野党合意の上、法案を成立させ、今年中のできるだけ早い時期に実施する」と明記された。

「財源確保、流通への影響、地方財政への配慮等の課題を含め、…与野党合意の上」とあるように、廃止に伴う影響や諸課題について、解決に道筋をつけることも併せて合意されている。

 与党は、この合意文書に基づく詳細な制度設計を固めてから、旧暫定税率の廃止に向かいたいのに対して、野党はともかく廃止を優先し政治的な果実を早く得たいようだ。

 自民党総裁選で中断されていた協議は、今後、再開される見通しだが、新政権の発足で、「ガソリン減税」は実施に向けて加速するのか。

 問題は、代替財源問題だけではない。揮発油の旧暫定税率の廃止は、「ムダな公共事業」の象徴としての道路予算の特定財源だったことへの批判から出てきたものだが、道路建設は減っても、道路の補修や維持管理の費用が今後も増え続ける状況だからだ。

 老朽化が進む道路の補修や管理の費用は、誰が負担するのか。さらに言えば、ガソリン減税は、脱炭素化に逆行するほか、日本のエネルギー経済安全保障や自動車産業の“衰退”の引き金にもなりかねない問題をはらむ。

 新政権発足後、最初の政策課題になる可能性が高い「ガソリン減税」で議論されるべき問題を2回に分けて取り上げる。