麻布台ヒルズのコンセプトは、「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街“Modern Urban Village”」。広大な中央広場を中心に、オフィス、住宅、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設、文化施設などの多様な都市機能が融合している。
都市再生の法律成立で
容積率日本一のビルが誕生
実は、東京の都市再開発についての議論が政府内で本格化したのは小渕内閣のときだった。「経済戦略会議」のメンバーの1人だった森稔氏(当時森ビル社長)が、都市開発の必要性を力説した。その当時、メンバーの多くはあまりよく理解できなかった。会議で森氏が、切実に訴えた姿を今でも鮮明に覚えている。森氏の熱意を反映して、戦略会議の最終報告には都市開発の重要性が明記された。
それを受ける形で小泉内閣の2002(平成14)年、「都市再生特別措置法」が成立する。都市再生のために、容積率の緩和や補助金という新しい措置を講じることになった。2007(平成19)年には容積率日本一のビルが完成する。名古屋のミッドランドスクエアである。毎日新聞社、トヨタ自動車、トヨタ不動産が共同所有するミッドランドスクエアにトヨタ自動車の本社がある。
その後、2013(平成25)年の安倍内閣の「国家戦略特区」につながっていく。日本では、大規模な都市再開発に際しては都市計画審議会での審議が必要とされている。通常、審議には5~7年かかった。「国家戦略特区」で、それが2年でできるようになった。その結果、潜在的な再開発計画が一気に噴き出したのである。
1995(平成7)年の「世界都市博」中止を契機に、デベロッパーは臨海部から都心に回帰して、ゾーンで競い合うようになった。三菱地所は主として大手町・丸の内、三井不動産は日本橋・銀座、森ビルは六本木・虎ノ門・赤坂である。ゾーンでの競い合いが、「都市再生特別措置法」と絡まって、東京の再開発に大きく貢献したのである。