「欲しい」という気持ちを
“一度寝かせる”若者たち

 彼・彼女らはSNSなどで気になる製品に出会っても、すぐその場で「どこで買えるんだろう」「他にどんな製品があるんだろう」といった具体的な検討はせず、ただ時間をおきます。すると、寝かせている間に2つのことが起こります。

 まず、寝かせていると、その製品に関する好意的な情報が、かたちを変えて「流れて」きます。たとえば、最初に見かけたのとは異なる投稿者が、その製品やその製品カテゴリーにまつわる事柄を好意的に紹介しているのを見かけたりします。

 こうして能動的な探索でなく、受動的な接触を繰り返すうちに、「そういえば欲しかった」と思い出し、魅力度が高まっていきます。そして段々と、頭の中でその製品や製品カテゴリーの占める割合が上昇していきます。

 視点を変えれば、「好ましいもの」や「好ましいこと」として彼らに接触し続けない限り、絶えず行われる情報更新がもたらす「これも、いいかも」という気持ちに押し出されてしまい、本格的な検討の前に選択肢から外されてしまいます。

 寝かせているあいだに起こる、もう1つのことは、自分の気持ちに「確信が生まれる」ことです。20代以下の人たちに話を聞くと、ものを買う前に解消したい不安の1つに「その製品を好きでいつづけられないかもしれない」という気持ちがあるということでした。

 彼・彼女らは、自分の気持ちがどれくらい続くかに懐疑的なため、手に入れたい気持ちが高まったときにすぐに買うのではなく、時間をおいて「熱が冷めていない。気持ちが高いままだから買っても大丈夫」と確信を持ててから、本格的に購入を検討したいと考えていました。

 読者の皆さんのなかには、自分が「好き」と思ったのならば、間違いなく「好き」なのではないだろうか、と思われた方もいるでしょう。

 しかし彼・彼女らが置かれた環境に目を向けると、必ずしもそうでないことがわかります。