最初に「短命性」について分析します。「次々に欲しくなる」気持ちはどうやって生まれるのでしょうか。
Cさんは服が大好きで、「1カ月に1回くらいは衝動的に欲しくなる」といいます。若い大学生が服好きなのは別に珍しいことではありませんが、興味深いのは彼が服を欲しくなるプロセスです。
SNSや動画を見ながら
ほしいものに出会う
多くの現代の若者と同じく、Cさんは片時もスマートフォンを手放しません。いつも目にしているのはInstagram、TikTok、YouTubeといったSNSです。彼が服を欲しくなるきっかけは、こうしたSNSのなかで、服に関する情報が「流れてくる」からだそうです。
ここでいう「流れてくる」とは、自分で能動的に調べたり探したりしているわけではないのに、関心が高い情報が画面に表示されることを意味しています。SNSではレコメンド機能(推奨機能)により、画面を眺めているだけで次々と情報に触れることになりますが、それによって「こんな服もあるんだ」「こんなのが流行っているんだ」という知識が深まるとともに、洋服に対する興味関心がどんどん高まっていくようです。
「流れてくる」という現象は、Cさんに限らず、現代の若者の情報接触行動を理解するためのポイントの1つです。今回の定性調査でも多くの若者たちにおいて、自ら探し出した情報でなく、与えられた情報によって購買意欲が形成されていくようすが見られました。
さらにCさんのスマートフォンには、フォローしているお気に入りのブランドのアカウントだけでなく、それ以外のアカウントからも好みの服の情報が次々と流れてきます。
たとえばラッパーのパフォーマンス動画をみていて、好みの服に出会うといった具合です。わざわざ服を探そうとしなくても、流れてくるものを気分よく眺めているだけで新しい服との出会いがあり、「欲しい」という気持ちが生まれてきます。