初耳だったら「聞いたことがないですね」と丁寧に言ったあと、「びっくりしたあ」と独り言のようにつぶやく。「ちょいタメ口」戦略と私は呼んでいる。
相手の印象的な言葉をそのまま繰り返すときもある。「ここまで来るのに3時間かかった」と聞いたら、「えっ、3時間?」と驚く。体言止めだ。リアクションに「です」「ます」をつけない。感情をあらわにする瞬間に親しさが漂う。
年齢や立場にかかわらず、互いに冗談を言える、相手が下の名前で呼んでくれる、プライベートも打ち明けるといった雰囲気ができていたら、たとえ年上の相手でも、親しい言葉づかいに切り替えてしまってもいい。距離が早く縮まるからだ。
本気で仲良くなりたいのなら
アイスブレイクはいらない
会議や商談で使われる「アイスブレイク」。氷を割る、すなわち緊張を解いてリラックスするための時間を指す。ゲームや自己紹介をすることもある。
もし、相手との距離を近づけたいなら、はっきり言えば、アイスブレイクで雰囲気をなごませる必要はない。天気の話を挟むのも逆効果になりがちである。
なぜならせっかくの打ち解けたムードを壊さないように、相手と本音で話すのが怖くなってしまうからだ。
相手に一歩近づきたいとき、心理的には一歩「前に出る」ことになる。
自己紹介なら、「ふうん」と聞き流すのではなく、「もっと知りたい、もっと聞かせて」とあなたが一歩近づく。
仕事の話であっても、「なぜ?」「どういうふうに?」「これからはどうするの?」というふうに、深く迫り、広げていく。
この会話にはむしろ緊張感が漂うのだ(もちろん、にこやかに笑みを浮かべながら、一歩踏み出してもいいのだが)。
アイスブレイクをするのなら、商談や会議が始まる前の「場外のタイミング」がいい。名刺交換をして席に着くまで、会議室に移動するまでの「すきま時間」こそが勝負だ。ここで和気あいあいと会話ができれば、相手も自分も安心感を抱きながら本題に入れる。
そして、相手と本気で仲良くなりたいのなら、アイスブレイクではなく、「相手への興味」を伝えること。「相手に近づく」ことをしてみよう。
多少緊張していても、互いの心に橋をかけたいという気持ちは相手に通じるものだ。