(相手の名前の漢字から)「素敵なお名前ですね。ひょっとして、お生まれは夏ですか?」
(肩書や部署名から)「興味深いお仕事ですね。どのような分野のご担当ですか?」
と、目の前の相手のことを聞く。
あるいはひと言、「お名前の響きが素敵ですね」「こんなにすごい仕事をなさっているんですか」と、感想をつぶやくだけでもいい。相手の表情が一瞬で変わるはずだ。
自分が自己紹介をするときも、「××会社の□□です」だけでは、「あ~、本社は大阪ですよね」と会社にまつわるよもやま話が始まってしまうかもしれない。
そういったとき「徐々に慣れてきたら、相手のこともわかるだろう」と考えがちだ。
しかし、人生は一期一会。いつまでも、自分のペースで会う機会がある人ばかりではない。
出会ったとき、「はじめの1分」の自己紹介では「聞き方」こそ気を付けたい。
距離を縮めたい場合
敬語が逆効果になることも
初対面だと、「相手に失礼がないように」と、必要以上に言葉が丁寧になりがちだ。
たしかに、丁寧語や敬語で接すると、相手への敬意が感じられ、「好ましい印象」になる。ところが、リスペクトを示したつもりの言葉づかいゆえに、相手との距離を遠ざけ、仲良くなりたいとき「壁」になってしまうこともあるのだ。
そもそも、敬語は何のためにあるのか。起源は日本で身分制度がしっかりあった時代にさかのぼる。
奈良時代、8世紀の文献ですでに使われていた。身分制社会で「上下関係」を表す表現だった。生まれつきの階級や職分がない現代で、敬語は身分制社会とは異なる文脈で、活用され続けているのだ。
文化庁によれば、「敬語の役割」とは、先輩、上司、年上の人など「上位者」を高めるほか、「親しくない人との距離を取るため」とはっきり書いてある。
「敬語は初対面の人や、余り親しくない人、また、自分の属している職場や集団の外部の人との距離を隔て、相手に踏み込まない配慮を表す働きがある」(文化庁サイトより)。
つまり、初対面で相手との距離をすぐに近づけたい場合、敬語を使うと逆効果になる可能性がある。
敬語を使えば、先輩や上司、年上の人に失礼にならない半面、「距離を取る」役割がある、と認識する必要があるだろう。