千賀と藤浪は、球速とK9が高く、BB9が低いと言う同じパワーピッチャータイプの投手ではあったが、藤浪はK/BBが非常に悪かった。イップスを発症したとも言われるが、明らかに調子を落としてからのMLB挑戦であり、実力を発揮できていない。
山本由伸は、NPB時代の成績は抜群で、球速もあり、すべての数値が抜群。MLBでの成功が約束されていると言っても良い。しかし彼の場合、身体が小さく、力投タイプなのでトミー・ジョン手術(編集部注/肘の内側側副靭帯の損傷や断裂を修復する手術)は不可避だと思われ、それが「いつになるか?」ではないか。
今永は球速がない投手だが「技術で三振が奪える」投手であり、K/BBの数値が優秀だった。左投手でもあり、アナリストのサポートを得てMLBに移籍後、進化の跡がはっきり見えた。
2025年MLB挑戦投手の
成績はデータで予測できた
2024年オフにMLB挑戦を表明した5人の投手について見ていこう。
数字だけを見れば、佐々木朗希は、山本由伸さえも上回る。球速、K9に加えBB9、K/BBも抜群だ。MLB球団が色めき立つのはわかるが、彼はMLBの中4日どころかNPBスタンダードの中6日のペースでさえ、満足に投げていない。MLB移籍後は常に「故障しなければ」という注釈がついて回るだろう。
九里は早々に海外FAでの移籍を断念し、オリックスに移籍が決まったが、数値を見ても彼は有原や上沢に似た「打たせて取る」投手だ。MLB側に照会はしただろうが、上沢同様、芳しい評価ではなかったのだと思う。
菅野智之は、評価、予測が難しい。球速、K9の数字は低く、これだけを見れば有原、上沢タイプだが、制球力が依然として優秀でK/BBは山本を上回る。そして経験の豊かさ。1年契約と言うのは、菅野、オリオールズ双方にとって「お試し」ということだが、先発3~4番手程度の成績を挙げるのではないか。
小笠原と青柳は、左腕、アンダースローとそれぞれ特徴のある投手だが、数字的に見て活躍するのは難しいだろう。

このデータからわかるように、こと投手に関しては、MLBで活躍しそうなNPB投手はだいたい予測がつくようになっている。
特にパワーピッチャーは、一定程度の制球力があり、三振をしっかり奪うことができれば、ほぼ間違いなくMLBでも通用する。その結果として、投手に限定すれば、実質的にNPBはMLBの「マイナーリーグ化」しているとみなすこともできる。
大きな経済格差があるので、これは止められないだろうが、NPB全体、あるいは日本野球界全体で、今後の対応を考えていく必要があるだろう。