中国への警戒感が高まるなか、2022年にロシアがウクライナへの侵略を開始しました。

 プーチン大統領は、ウクライナはロシアの勢力が及ぶべき範囲だ、と主張しています。ロシアは自分たちの行動を自衛権にもとづくものだとしていますが、とても受け入れられる話ではありません。

 もしロシアがウクライナを完全に制圧することになり、これに加えて中国による台湾侵攻まで許せば、世界のすべての国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められないとする、現代の「主権」国家システムが崩れてしまうことになります。

 かつていくつもの地域やさまざまな民族を強制的にまとめて支配した、「帝国」の時代が復活することになりかねません。

 一方、ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるため、アメリカがウクライナに軍を派遣してロシア軍と戦闘するようなことになれば、第三次世界大戦になってしまいます。

 また、中国が台湾に侵攻した場合、アメリカ軍が台湾防衛にかけつけると想定すると、アメリカ軍と中国軍が直接対決することになります。北朝鮮の動きと連動することもありえるでしょう。西のウクライナ、東の台湾をめぐる紛争は、大戦争の発火点となる危険があるのです。

勢力均衡が破れれば
「やられる前にやる」しかない

 ロシアや中国が力による一方的な現状変更をおこなおうとするのを、グループ全体で侵略をやめさせる、国連による「集団安全保障」でとめることはほぼ不可能です。両国が国連安保理常任理事国として拒否権を持っているからです。

 集団安全保障が機能しないとしたら、国ぐにのあいだの力のバランスを保つことで帝国ができるのを防ぐ「勢力均衡」で対応していくことが考えられます。