日本製鉄の蹉跌 鉄鋼 世界大乱戦#4Photo:BeyondImages/gettyimages

日本製鉄の米USスチール買収交渉が大詰めを迎えている。だが、日鉄の事業戦略は製鉄事業にとどまらない。昨年12月にカナダの鉄鉱石鉱山の権益取得を発表するなど、原料ビジネスへの資金投下を惜しまない。国内総合商社大手の三井物産もオーストラリアの鉄鉱石に8000億円の投資を決めており、“脱・脱炭素”にも思える原料権益争奪戦が白熱している。特集『日本製鉄の蹉跌 鉄鋼 世界大乱戦』の#4では、原料権益に巨額をつぎ込む日鉄と三井物産の真意を解明する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

日鉄の北米戦略はUSスチールだけじゃない!
カナダの鉄鉱石にも巨額投資

 日本製鉄は2023年12月に米鉄鋼大手のUSスチール買収を発表して以降、1年以上にわたって米政府機関や労働組合など、関係先との折衝に奔走してきた。トランプ米大統領も日鉄との協議に前向きとの見方も出ており、交渉はいよいよクライマックスに差し掛かろうとしている。

 実はこの間、日鉄は北米で別の戦略も推し進めていた。昨年12月、カナダの鉄鉱石鉱山への出資を発表したのだ。出資額は162億円で、今後想定される開発費用も含めると、投資額は1500億円規模にもなる。詳細は次ページで述べるが、日鉄は石炭や鉄鉱石といった原料権益を次々と押さえているのだ。

 鉄鉱石では、国内総合商社大手の三井物産も思い切った投資戦略を打ち出している。今年2月、三井物産はオーストラリアの鉄鉱石鉱山を8000億円で取得すると発表したのだ。同社の当期利益1年分に迫る超巨額の投資だ。

 一見“脱・脱炭素”にも思える原料分野で異業種が争奪戦を繰り広げているのはなぜだろうか。実はその裏には、両社に共通する緻密な戦略がある。

 次ページでは、原料権益に巨額をつぎ込む日鉄と三井物産の真意を解明する。