5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#50Photo:Bloomberg/gettyimages

第1四半期決算ではアドバンテストが上方修正した一方、東京エレクトロンは下方修正を余儀なくされた。米エヌビディアの業績に世界の投資家が一喜一憂するなど半導体セクターの注目度は高いが、けん引する生成AIについては強気と弱気の見方が錯綜している。果たして今後はどうなるのか。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#50では、半導体企業を取り巻く四つの不安について解説しつつ、グローバル競争を勝ち抜いて中長期で伸びる企業、このままでは失速しかねない企業も具体名を挙げて紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

AI半導体に賞味期限はあるのか?
半導体企業の3年後を大予測!

「上方修正を発表したアドバンテスト」と「下方修正を余儀なくされた東京エレクトロン」――。半導体製造装置メーカーの第1四半期決算は明暗が分かれた。

 日経平均株価の最高値更新をけん引した半導体関連企業の勢いは今後も続くのか。注目度が高いAI半導体については「強気」と「弱気」の見方が錯綜しており、一部でバブル警戒感も台頭している。

 これは米国でも同様だ。米エヌビディアが発表した2025年5~7月期決算は、売上高が前年同期比56%増、純利益が59%増となった。市場予想を上回る着地となったが、決算発表後の株価は下落した。データセンター部門の売上高が市場予想に届かなかったこと、中国アリババによるAIチップの自主開発報道などが影響したとみられている。

 だが、岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは強気の見方を崩さない。日々のニュースに対しても過剰に一喜一憂する必要はないと指摘する。この数年、半導体セクターでは“いいニュースも悪いニュースも突然出てくる”展開が続いているからだ。

 この1、2カ月に限っても「韓国サムスン電子や米インテルの半導体が失速」というニュースの後に「サムスンが米テスラから大型受注」「トランプ米政権がインテルの株を保有する」という話が出てきた。

「短期的な株価は目先のニュースに左右されるが、AI投資をけん引役とした半導体セクターの市場拡大は簡単には崩れない。AIは革命的な変化であり、まだ黎明期に近い。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon.com、Microsoft)を筆頭に今後も覇権争いは続くはずだ。生き残った数社が、それぞれ特徴のあるAIを開発して、それが世の中に実装されてくる流れが続くだろう」(斎藤氏)

 ただし、半導体市場全体が伸びたとしても、成長セクターだけに企業間の競争は激しい。詳しくは次ページで述べるが、複数の不透明要素が台頭していることも事実だ。

 一方、日本企業に目を向けると、半導体製造装置メーカーは業績拡大を背景に社員の待遇を向上させてきた。ディスコの平均年収は15年3月期の818万円から25年3月期は1672万円、レーザーテックも15年6月期の1038万円から24年6月期は1638万円に増加している。東京エレクトロンも含め、平均年収は約4000社の上場企業の中でもベスト50に入り、メーカーではトップ級だ。

 人材にも恵まれている。新卒採用の東京一工+旧帝大以上の割合はレーザーテックが67%、東京エレクトロンが24%と高い。これは財閥系商社や外資コンサルティング企業に近い水準である。

 生成AIというチャンスを追い風にして、もう一段飛躍する企業はどこか。それとも今がピークなのか。

 次ページでは技術革新が進む中で躍進が期待できる本命企業や、復活の兆しが見えつつある企業、地味だけれども着実に伸びる企業について具体名を挙げて分析。日本の半導体企業に関連する四つのリスクや相対的に厳しい企業についても解説する。

図表:半導体 3年後(サンプル)