金銭感覚が夫婦で異なり、なにかと喧嘩に

「夫から生活費がもらえなくなります。これから暮らしていけるのか、老後資金は作れるのかが不安で……」。そう相談に訪れたのは、自治体関連の施設でパート勤務をしているTさん(58歳)。3カ月ほど前、夫から突然離婚を言い渡され、今は家庭内別居状態。離婚後は自分一人で暮らすことになるため、将来への不安が大きいといいます。

 夫(61歳)は大手メーカー勤務で、現在は再雇用制度を利用して働いています。4人の子どものうち、3人はすでに成人して独立し、大学生の次女(20歳)だけがまだ同居中です。

 夫婦の離婚話の発端は、Tさんのお金の使い方に対する夫の不満でした。ただ、実際にはその背景に、長年にわたるお金の感覚の違いが不満となり、それが積もりに積もっていたことが大きかったようです。

 Tさんご夫婦は、夫が15年ほど単身赴任をしており、再び同居を始めたのはここ3年ほど。単身赴任が決まった当初、家族全員で転居するかどうかを話し合ったものの、夫は昇進のため、Tさんは子どもたちの教育環境を優先するため、別々に暮らすことを選びました。

 生活の拠点が2カ所になることで家計の負担は増えましたが、Tさんは子育ての合間にパートに出て、なんとかやりくりを続けてきました。とはいえ、生活の柱は夫の収入です。夫婦はそれぞれの場所で責任を果たしていたつもりですが、「見えない家計」のやりくりが続く中で、少しずつ不満が募っていったようです。

 実際、夫婦喧嘩の原因はいつもお金のことでした。夫は赴任先での人付き合いや交際費にお金を使いたいと考えていましたが、Tさんは「子どもの生活費を削られては困る」と反発。生活費の配分を巡って、何度も言い争いになったといいます。

「なんで俺だけが稼いで金を送らなきゃいけないんだ」「子どもにお金が回らないと暮らせない」と、夫婦は互いに譲らず、関係は徐々にギクシャクしていきました。それでも子どものため、という一点で折り合いをつけてきたそうです。

夫が役職定年で収入減少後、妻に新しい趣味ができた

 やがて、夫が役職定年を迎えて収入が減少。それに伴い、Tさんへの仕送りも減額されました。しかし、子育てが一段落して自分の時間ができたTさんは、偶然にも次女の影響でプロレスに興味を持ち始めます。

 最初はテレビ観戦でしたが、徐々に試合を生で観たいと思うようになり、次女と一緒に観戦に出かけるようになりました。チケット代は1回で2人分、約2万円。ひんぱんに通うとなれば、家計への影響は少なくありません。

 パートの勤務時間を増やして収入を補う努力もしたそうですが、それでも足りず、夫に「ちょっと足りないの」「今月は特別な支出があって」と頼って、臨時でお金を送ってもらうこともあったようです。

 夫が単身赴任から戻った後、その支出が明るみに出て大喧嘩に発展。夫は「我慢して働いているのに、なぜ自分のお金が娯楽に使われるのか」と不満を爆発させました。