一方、Tさんは「趣味も生活の一部」と考え、当初は自分のパート代をできるだけ貯蓄に回し、プロレス観戦などの支出には夫の収入を充てることに抵抗はなかったといいます。ところが実際には、夫からの生活費では足りず、自分のパート代も次第に趣味の費用に回さざるを得ないのが現実でした。
趣味へのお金のかけ方について夫に怒られるとしばらくは控えるものの、またしばらくすると元通り。そんな繰り返しに夫が限界を迎え、とうとう離婚を申し渡したのです。
熟年離婚したら、妻はどうやって生活?
夫は「趣味を否定するつもりはないが、少し節度ある使い方をしてもらえないか」と繰り返し訴えていたようです。夫は以前から「後輩にごちそうしたい」「社内の交流に積極的に参加したい」と思ってきましたが、家庭や将来のために節約を意識してきました。今は節約してやりくりをし老後資金を貯めようとする一方で、Tさんが気軽に支出を続けているように見えるのが、我慢ならなかったのでしょう。
離婚話を機に、Tさんはようやく自分のお金の使い方を振り返るようになりました。現在の月収は手取りで約16万円、貯金は50万円ほど。財産分与である程度まとまったお金が入る可能性はあるものの、夫も教育費などで貯蓄を取り崩していると予想され、大きな期待はできません。
今後の生活を立て直すには、仕事を増やすことが現実的な選択肢となります。支出の見直しと収入アップを両輪に、暮らし方を組み立て直していくことが求められます。
お金は生活の土台であると同時に、信頼や価値観の象徴でもあります。そこにズレがあるまま年月を重ねれば、やがて取り戻せないほどの距離が生まれてしまいます。
「稼ぐ側」「使う側」という分担にこだわらず、今は協力し合う時代です。夫婦の形がどうであれ、お金のこと、暮らし方、将来について、定期的に話し合う習慣を持つことが、平穏な日常を守るための鍵になるのではないでしょうか。