メイコが夢だった
「素人のど自慢」に挑戦

『あんぱん』はこの日、戦争中に防空壕ばかり作って青春らしさが味わえなかったメイコが、戦後、青春を取り戻したいと「素人のど自慢」に挑戦する。

 明日は予選会の日。夜、外で『東京ブギウギ』を練習していると、のぶ(今田美桜)が帰ってくる。

 再会した健太郎はNHKに勤めていて好都合? 予選を応援に来てくれるだろうかという話題で、嵩(北村匠海)はいまのいままでメイコの健太郎の気持ちに気づいていなかった。呆れるのぶ。自分だって嵩の気持ちに全然気づいていなかったのに。

 メイコがこれまで結婚しなかったのは健太郎のことを思い続けていたからだろうとのぶは言う。他人のことだとよくわかるもののようだ。

 いよいよ、予選会。うまい人もあまりうまくない人も混合で、合格者も出て、緊張が止まらないメイコ。でも、歌い始めたら好調。のびやかに明るく歌い、ノッてきたところで――

 健太郎がひょっこり顔を出した。

 驚いたメイコは声が裏返り、歌を止めてしまう。当然不合格。残念。

 健太郎は嵩に頼まれて見に来たのだが、タイミング悪すぎ。歌の途中でドアを開けてにっこりされたら誰だって調子が狂うと思う。そういうなんかズレたところが健太郎らしさではあるが。

 長屋に戻ったメイコがのぶたちに慰められていると、健太郎がやって来た。打ち上げをやる予定で呼ばれていたのだ。次ははじめから応援すると言う健太郎に「健太郎さんが応援してくれる限りうちは落ち続けます」と複雑な女ごころを吐露するメイコ。嫌われたと勘違いする健太郎。これでは埒が明かない。

「いつまで思いを秘めちゅうつもりながね」

 蘭子(河合優実)がやさしく背中を押した。

 朝田家三姉妹はこの手のことが得手ではないと言う蘭子。とくにのぶは、と指摘して、微妙な空気になるのぶと嵩と蘭子の3人の間合いがおもしろかった。

「ほんと俺は…ふうたん ぬるかねえ(どんくさい)」

 ようやくメイコの秘めた思いに気づいた健太郎に、メイコは「ずっとずっと好きでした。いまも大好きです」と告白した。

80年前8時15分に止まった日常と、メイコがまた動き出した朝【あんぱん第93回レビュー】