
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第93回(2025年8月6日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
48年変わらなかった
朝ドラ開始時間
「今日からは義兄さんと呼ばせていただきます」(健太郎〈高橋文哉〉)
メイコ(原菜乃華)と健太郎が結婚した。
今日、8月6日は8時00分から「令和7年 広島平和記念式典」が放送されるため、繰り上げで7時45分から『あんぱん』が放送された。
毎年、8月6日の朝ドラは放送時間が変更になる。「広島平和記念式典」の後だったこともあるが、近年は前に繰り上がって放送されている。
ここで朝ドラ放送開始時間の歴史を簡単に振り返ろう。朝ドラの第1作『娘と私』(1961年)は8時40分はじまりだった。2作目『あしたの風』(62年)から8時15分開始になり、2010年、第82作『ゲゲゲの女房』(2010年)から8時00分開始に変更された。実に48年もの間、朝ドラのはじまる時間は8時15分だった。
いま、8時15分は『あさイチ』のはじまる時間だが、いずれにしても8時15分という時間は生活の区切りのような印象がある。朝ドラが終わったら家を出ようとかそういう区切り感になっている。
この8時15分という時間をいっそう強く意識するのが毎年8月6日である。1945年、広島に原爆が投下されたのが8時15分だった。8時15分、それまで当たり前に続いていた日常生活が途切れたのだ。
毎年、8月6日に思うのは、朝ドラが続く日々のかけがえのなさだ。朝ドラで描かれる人々の生活や夢、それを楽しみに毎日見ている人たちの生活や夢が決してなくならないようにと願う。