食べ物に加えて技術面(テクノロジー)のベター志向も同様です。テクノロジーを持つのはヒトの特徴です。

 ちなみに、チンパンジーも多少道具を使います。アリを食べるときに細い枝を巣穴に突っ込んで、「釣り」のようにして食べます。

 突っ込みやすいように枝の葉を落としたり、噛んで先を尖らせたりします。また、硬い木の実を石で叩いて割ったりもします。

便利なものは作れるけれど
誤った使い方で自分を苦しめる

 さてヒトはというと、最初の「道具」は石を削って先を尖らせたものです。そこにとどまらず、叩きやすいように形を加工したり、木の取っ手をつけて遠心力を高めたりいろいろと工夫を加えバージョンをアップしました。

 新しい技術は集団で共有して、誰かが何か「より」便利なもの(ベターなもの)を作ると、それをみんなで真似します。新しいテクノロジーはあっという間に集団内に広がり、すぐにそれを超えるものがまた集団の中の誰かによって作られていきます。

 便利な道具を作り出すテクノロジーは、安定した食料確保につながり、死との距離感を大きくする「幸せ」な行為なのです。

 まとめると、ヒトの「幸せ」=「死からの距離が保てている状態」も、生存本能に根ざしています。そして並外れた知性と創造性によって、より快楽が得られるもの、便利なもの(ベターなもの)を次々に作り出していきました。よく言えば「成長志向」が強い生きものです。

 ただ問題は、残念なことに、作り出した「便利なもの」の使い方は遺伝子に刻まれていないことです。その結果、集団快楽中毒状態に陥るか、あるいは使い方を誤ってかえって自分たちの首を絞めてしまうのです。