もっと感情を働かせるために、そしてもっと自分らしく感じるために、私たちは接続する。ところが、どんどん接続しながら、私たちは孤独から逃避している。そのうちに、隔絶して自己に意識を集中する能力が衰えていく。〔…〕ひとりきりで考える習慣がないと、自信をもって堂々と自分の考えを話題にのぼらせられなくなる。協調する力がつちかわれない。革新も生まれない。それは常時接続によって衰えていく、孤独を味わう能力を要するものだからだ。(注1)
SNSが加速させたアテンションエコノミー(編集部注/人々の注目や関心が経済的価値を持つという概念)は、私たちの注意を散り散りにします。要するに、孤独は何かのために利用できる時間を用意するものではないし、ネットを通じて孤独を発見しようとすることは悪手だということです。
私たちが共有すべきスローガンは、「注意の分散に抵抗せよ、孤独を持て」です。スマホは私たちのタスクを複数化し、従ってそのために要する注意を寸断してばらばらにしています。1つのことに没頭することが難しくなっていくことの心理学的な意味についてタークルは興味深い指摘をしています。
うわの空の状態では、人が話していることに含まれる言外の感情的・非言語的意味を捉えそこないやすいし、そうした不注意さは、他者とのやりとりだけでなく、自己理解にも発揮されるというのです。
つながり続けた結果
他人の心も自分の心も見えなくなる
つまり、タークルによると、常時接続に身を委ねて不安を「つながり」や「シェア」で埋めてばかりいると、他人だけでなく自分の感情や感覚を繊細に受け止め、掘り下げていくことがますます下手になっていきます。
実際、スマホを多用している人とそうでない人とを比較した研究では、常時接続は、感情理解に悪影響を及ぼしていると示唆されています。
注1 シェリー・タークル(日暮雅通訳)『一緒にいてもスマホ:SNSとFTF』青土社、2017、65頁 一部表記を修正しました。