自分が相手のことをどう思うかは自由です。

 でも、自分には相手の行動や感情を操作する権利はありません。

「相手の気持ち、考え、行動は相手のもの」

「相手を思いどおりに変えることはできない」

 バウンダリー(編集部注/自分と他者の間にある境界線)の考えとして、この認識はすごく大事だと思います。

領域侵入の代表格は
アドバイス面した「べき思考」

「相手へのアドバイス」は相手の領域に踏みこむことになりがちなので注意が必要かもしれません。

 たとえば鍋でお湯を沸かしている妻に、夫が「電気ポットで沸かしたほうが早いよ」とアドバイスしたとします。

 それに対して妻は「鍋のほうが洗うのが簡単だからラクなの」と答えたのに、さらに夫が「せっかく電気ポットあるんだから使うべきだ」なんて言ったとしたらどうでしょう。

 夫がお湯を沸かしているのなら、電気ポットを使えばいいだけの話ですが、沸かしているのは妻です。

 ここで夫のほうが妻の行動に対して「使うべきだ」というのは、線を踏み越えているといえそうです。

「アドバイス」という顔をして自分の「べき思考」を押しつけているからです。

 アドバイスは相手の領域侵入の代表格です。

「もっと身だしなみに気をつかったほうがいいよ」

「痩せたほうがモテるんじゃない」

 なんてアドバイスは、相手の線を踏み越えているといえるでしょう。

相手への助言は
責任を取れるかが境界線

 また、バウンダリーは「責任の範囲」の話でもあります。自身で責任をとれない範囲のことに口を出してはいけません。

「そんな仕事、辞めるべきだ」

「その気持ちは、上司に絶対伝えたほうがいい」

 なんて、その人の人生や仕事に責任をとれないのに、「べき」「絶対」を押しつける人がいます。

 お互いの心地良い関係を守るために「べきを押しつけそうになったら立ち止まる」を意識していきたいですね。