セックスレス夫婦に
話し合いは可能か
このアンケートの重要な指摘の一つが、男性はSRHRすなわち「性と生殖の健康と権利」を自分ごとと捉えていない傾向があるかもしれない、という示唆である。
SRHRの認知・理解率は女性よりも男性の方が10ポイント程度も高かった(男性・認知率30%、理解率12%/女性・同20%、同6%)。それにもかかわらず、それぞれの項目の重要意識や尊重実感が女性よりも13ポイント〜24ポイント低いという結果だった。
アンケートではこの結果を「男性はSRHRを知っていても『自分のための権利として認識していない』、つまり当事者意識が育ちづらい現状を示していると考えられます」「ジェンダーやSRHRについて語られる際、女性を対象とした文脈が多く、『男性も当事者である』『男性にもSRHRに関わる権利がある』という視点が欠けていることが多いことが関係している可能性が考えられます」と分析している。
実際、月経や妊娠・出産の当事者となる女性に向けての発信は多いが、男性の性に関してはヘルスケアの観点からのリーチが少ない。男性の「性」は、「エロ」文脈での情報は豊富にあっても「健康と権利」の面からは放って置かれている、あるいは雑に扱われていると感じている男性も多いのかもしれない。
冒頭のケースで考えてみると、セックスレスは夫婦がどちらも納得してその状態にあるならば「健康と権利」が損なわれている状態ではない。ただ、どちらかがその状態が自分の意思と反していると感じている場合は問題だ。
アンケート結果には「妻がしたい時にしか性行為ができない。私の意向は無視される傾向」(男性/40代)という男性からの回答がある一方で、「行為を強要されること頻繁にあった。不機嫌になるので仕方なく耐えていた。喜びなどは一度も感じたことがない」(女性/50代)「基本的に性行為を好まないので、相手に気遣って半ば無理にすることもあるため」(女性/40代)といった女性からの回答もある。