こういった場合、たとえば、挿入に過度にこだわり過ぎずにスキンシップを重視するなど、お互いが満足できる形での性行為をカップルで話しあえることが理想だろう。しかし夫婦やカップルであっても、性に関する会話に恥ずかしさや気まずさを覚える人は多い。
「恥ずかしいもの」「いやらしいもの」ではなく、最初から心身の健康に関するものとインストールされていれば話しやすいのであろうが、一方で性を淫靡とする考え方に価値を見出す人もいるから難しい。個人的には、性と生殖に関しては「健康と権利」をベースとした上で、オプションとして淫靡な世界の選択肢があればいいのではないかと考える。
付け足すと、このようなアンケートの場合、「男性のほうが性欲がある」とか「女性の性欲ははしたない」といった社会通念が働き、男性側が「セックスしたくない」とか女性側が「セックスしたいけれど夫に避けられる」といった実態は回答に出づらいのではないかとも想像する。
男性が自分の「性」を
尊重するために
また、近年の報道などにより男性の性被害も以前より問題視されるようになったが、現在でも男性が受ける性的侵害は軽視されがちである。
たとえば先日女性トイレが男性トイレに比べて少ない実態がニュースとなった際に、男性用小便器は人権侵害だとする男性の声をネット上で見かけた。確かに排泄時に他人から性器を見られる状況は女性にはない。
「男なんだからそのくらい問題ない」という感覚が、男性が「性と生殖の健康と権利」の視点を持つことから遠ざけているとも言える。
まず自分が尊重されなければ、他人を尊重する視点も持ちづらい。SRHRが広まるにあたり、まずこれは女性や子どもだけでなく、すべての人にとって必要な概念だと認識されることを願いたい。