「みんな自分の夢を追いかけてちゃんと夢をつかんだ。
うちは…何しよったがやろ」

 頼りなさげだったコン太が戦争体験を経て、社会に貢献する仕事を見つけた。

 羽多子も手伝うという。彼女は高齢者だって子どもに世話にならずとも自立できることを示している。

 ふわふわ「綿あめみたいな女の子」(by蘭子)だったメイコは、すっかりしっかり2児の母になった。蘭子は筆一本で自活している。

「みんな自分の夢を追いかけてちゃんと夢をつかんだ。うちは…何しよったがやろ」

 のぶだけ自分には何もないと肩を落とす。

 そのときちょうど、嵩の『まんが教室』がはじまった。人気が出たようで、子どもたちの人気者になっていた。その姿を見るのぶの表情は複雑だ。

 嵩の漫画のおもしろさの唯一の理解者で、ずっと応援してきて。テレビに出るのも、子どもたちに教えたら得ることもあると背中を押していた。気づけば他人のことばかり考えていて、自分がおいてけぼり。

 なにしろ、子どものために働きたいと思っていたのはのぶのほうである。子どもが好きで教師になって、戦災孤児のことが気になって代議士秘書になった。ああ、それなのに、それなのに、いま、のぶは鉛筆を削ってばかりいる。切ない。

 ちなみに、『まんが学校』は、NHKのサイトによると、1964~66年度作品で「漫画家のやなせたかしが“先生”を、落語家の立川談志が司会を務め、子どもたちが笑いのなかで社会科的知識を身につけていくクイズ番組。毎週、子どもたちをスタジオに招き、漫画の描き方を練習したりクイズを解いて楽しんだ。総合(月)午後6時からの25分番組」

 立川談志がドラマでは立川談楽となっている。演じた立川談慶は名前を立川談志につけてもらった直弟子。

「気づけば、自分がおいてけぼり」…嵩の背中を押し続けたのぶが、ひとり立ち止まった朝【あんぱん第103回】

「気づけば、自分がおいてけぼり」…嵩の背中を押し続けたのぶが、ひとり立ち止まった朝【あんぱん第103回】