自分でカスタマイズすると健康にいい

 こうした朝の自由なカスタマイズ体験がもたらす効果は、直感的な満足感にとどまらない。選択の自由は、味の変化だけでなく、消費行動そのものを変える。カスタマイズは自己決定感を高め、それがより良い選択を促すということがわかっている。

 2025年に発表されたチョン・イルヨン、キム・ジヘ、ホ・ヨンウン、ファン・ファンデルランスらによる論文『健康に至るカスタマイズ:セルフカスタマイゼーションが食の選択に与える影響』は、セルフカスタマイゼーションが人の健康的な選択を促す仕組みを解き明かした優れた研究だ。

「朝サイゼ」と「朝マック」の決定的な違い…ヤミツキ確実なフォカッチャのアレンジとは?

 自律感が高まることで、よりカロリーや脂肪を抑えた選択が自然に行われるという実証は、外食産業や消費者行動研究にとって大きな貢献となっている。簡潔な設計と説得力ある結果により、実務への応用可能性も極めて高い。

 研究では次のことがわかった。

《セルフカスタマイゼーションは、消費者の自律感を高め、それによって、カロリーや脂肪摂取量を抑えた選択を促進する。実際に行ったピザ店でのフィールド調査では、固定メニューから選ばせる場合に比べて、自己カスタマイズを導入した期間では、1枚あたり143kcal、脂肪は109kcal減少した。これは、30分間の早歩きに相当するエネルギー消費量に近い》

 こうした「自由が健康を導く」という構造を、最も自然体で体現しているのが、この「朝サイゼ」の仕組みそのものであろう。

 ファミレスのメニューを自在に組み替え、自分だけの一皿を創り出すその行為は、まさに選ぶことの楽しさと責任を同時に引き受けている。そこには単なる味の工夫ではなく、自分で選んだものを最後まで楽しむという「自律の実践」がある。

 たしかに実際、飲食店が狙うボリュームゾーンの嗜好と、個人の嗜好には乖離がある。

 私の場合、食べ放題やビュッフェに行くと、満遍なく食べるというより、好きなものだけを極端に食べる傾向にある。そういう人間にはこのカスタマイズのスタイルが適切だ。

 サイゼリヤの朝食は、独自の食べ方を誰もが気軽に体験できる舞台なのだ。選び、組み合わせ、遊ぶことで、気づかぬうちに健康にも近づいているのかもしれない。朝食はもう、商品ではない。選ぶという行為そのものが、価値になったのだ。