「勉強を習慣化できる人」と「できない人」普段の行動でわかる決定的な違い『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第78回は、受験期における「習慣化」について考える。

「何をやろうかな」と迷う時間がもったいない

 勉強合宿から帰ると満足してすぐに休んで寝てしまったという天野晃一郎と早瀬菜緒。東大合格請負人の桜木建二は寝る前の勉強習慣の大切さを説明し、担任の水野直美は「歯を磨くように勉強しろ」という言葉を紹介する。

 寝る前に限らず、特定の時間や場所で勉強する内容をあらかじめ決めておくことは、効率を上げるうえで非常に有効だ。例えば「電車に乗ったら必ず英単語」「朝のホームルーム前に数学の問題を1問」といった具合にセット化する。こうすることで、「この時間に何をやろうかな」と迷う時間を削れる。

 もし10分の移動時間のうち、毎回3分を何をするか考えるのに費やしていたら、1年で約18時間も失う計算になる。これは模試を2回受けられるほどの時間だ。

 特に寝る前は、英語の長文や現代文、数学の難問など、じっくり思考を深められる分野がおすすめだ。布団に入った後も無意識にその問題を考え続けることで、理解が深まることがある。

 逆に自己採点のような作業は、朝に回すのも一手だ。採点前の「気になる状態」を一晩抱えて寝ると、脳がその問題を無意識に整理してくれることがあるし、朝の頭がさえた状態で見直すことで新しいアイデアが浮かぶ場合もある。なんなら夢で新しい解法が浮かんだことさえある。

 また、トイレやお風呂の待ち時間など、日常のスキマ時間も侮れない。私は、受験期には家中に英単語や歴史の苦手なポイントを書いた付箋を貼り、いや応なく目に入るようにしていた。結果、今でもトイレに入ると江戸幕府の鎖国政策の流れが自然と頭に浮かぶほどになった。

「勉強モード」へスイッチを切り替えよう

漫画ドラゴン桜2 10巻P137『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 さらに、勉強のスイッチを素早く入れる工夫も有効だ。たとえば「机に座ったらまずタイマーを5分セットしてペンを持つ」「勉強用の音楽をかける」「お気に入りのシャーペンに持ち替える」といった、小さな動作をトリガーにする。

 これにより「勉強しないモード」から「勉強するモード」への移行時間を最小化できる。多くの人は「やり始めるまで」が一番腰が重く、そこで時間を失っている。スイッチ動作をルーティン化すれば、その壁を大きく下げられる。

 共通して言えるのは、「勉強モード」と「非勉強モード」を完全に切り離さないことだ。もちろん休む時間も必要だが、切り替えに時間がかかりすぎるのはもったいない。

 むしろ日常のあちこちに勉強のきっかけをちりばめ、自然と取り組める環境を作るほうが効率的だ。私は自分をあまり信用していないから、こういったことなしに勉強できるとは思っていない。だから、無理矢理にでも勉強させるきっかけを忍ばせておいた。

 ただし、忘れてはならないのは「なぜその勉強をやるのか」という目的意識だ。

 すでに完璧に覚えている単語を何周も繰り返しても意味は薄い。時間を埋めることが目的化した「自己満足の勉強」ではなく、合格や実力向上といった明確なゴールに向けて内容を選ぶべきだ。限られた時間を、意味のある学習に変えることこそが、「勉強習慣」なのだ。

漫画ドラゴン桜2 10巻P138『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 10巻P139『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク