事業創造のフックとしてのデザインの役割

エンド・ツー・エンドで体験をデザインする! 日本を代表するBtoB企業で大規模なデザイン組織が生まれた理由FUMITAKA MURAGISHI
ニューヨーク工科大学大学院で文学修士を取得後、アメリカでデザイナーとして勤務。日本に帰国し、外資の事業会社、広告会社、出版社、デザインファームで、プロダクト、サービス企画、デザイン組織立ち上げなどを実施。2020年NTTデータに入社し、Tangityのデザイン責任者としてさまざまなプロジェクトの推進からデザインディレクションまで幅広く取り組んでいる。

──いわゆるITインフラ案件やシステム開発案件との連携はあまりないということですか。

 連携そのものは多いです。今もTangityの仕事の大部分は、NTTデータ社内の公・金・法(公共、金融、法人)分野の営業からの声掛けで始まっていますし、インフラやシステム関連のプロジェクトのUI/UX部分を担当する機会も多いです。

 提案段階から入る場合は、「どんな顧客体験がつくりたいのか」を起点に顧客企業とディスカッションして構想を練り、RFP(提案依頼書)作りからお手伝いしますし、導入後に「せっかく入れたのに使われない」という課題が出てきたら、従業員体験や業務プロセスの部分に入っていって、システムがどういうふうに使われれば成功なのか、そのためのUIはどうあるべきか、といった体験全体の交通整理をした上で伴走する、という取り組みもしています。

 ただ、これだけだと「社内にブティックスタジオがある」みたいな状態に近い。デザインで売り上げや提供価値を上乗せできているのは事実だとしても、NTTデータのビジネス全体で見たときの割合はすごく小さいんです。そうではなく、Tangityの提案がきっかけで始まったプロジェクトが、NTTデータのリソースにどんどん接続されていって、インフラやシステムも含む大きなビジネスになっていく──という動きにつなげていきたいと考えています。

──既存のビジネスに単純にデザインをアドオンするのではなく、一貫性のある体験設計でプロジェクト全体をつなぐようなイメージですか。

 そうですね。UIやUXのデザインだけで直接価値を出せるのはせいぜい1000万円ぐらいだったとしても、「体験価値」を起点にインフラやシステムまでつなげられたら最終的には100億円のビジネスを生み出せる。そうなって初めて、NTTデータのビジネスとして真価が出せるのではないかと思っています。