そして認知機能に関わる前頭前野がそれらの情報を判断し、「やはりコカ・コーラは特別だ」という結論を導いたのでしょう。
前頭前野はヒトが霊長類の中でも特異的に進化を示している領域であり、「人間を人間たらしめる機能を司る領域」です。つまり、ヒトの高次機能を司っており、認知・思考・意思決定などを担っています。
そのため、病気や事故等で前頭前野にダメージを負ってしまうと、人間らしい社会的な生活に支障をきたす例がこれまでも数多く報告されています。
この前頭前野に損傷のある患者を対象に同様のコーラ実験を行ったある研究では、患者にはブランドの影響が見られず、純粋な味覚評価のみであったと報告されています。これは前頭前野が正常に機能しないとブランド効果が消えることを示唆しています。
この研究からも、ブランドは我々の高次脳機能、こころに宿っているものといえそうです。前頭前野が記憶を取り出して、「欲しい」を決めているのではないでしょうか。
逆にいえば、一度根づいてしまったブランドを崩すというのは、相当に慎重にならなくてはなりません。
トロピカーナとローソンから紐解く
ブランドリニューアル失敗の理由
先ほどのレーシングゲームの中にもあったブランドのトロピカーナ(ペプシコ社)は、2009年1月に北米市場において主力製品「Tropicana Pure Premium」のパッケージデザインを刷新しました。
従来のオレンジにストローが刺さった伝統的なデザインから、透明なグラスに注がれたオレンジジュースの画像に切り替えたのです。広告キャンペーンには3500万ドルが投下された一大ブランドリニューアルでした。
ところが新パッケージに切り替えたところ、売上はわずか2カ月で20%も低下。トロピカーナは旧デザインへの回帰を早々に発表して、わずか数カ月で新パッケージは市場から消えることとなりました。
この時期、競合他社はトロピカーナが失った市場シェアを獲得して売上を伸ばしたそうで、慣れ親しんだデザインを変更することで、消費者にあえてブランドスイッチの機会を与えてしまったという見方もできるかもしれません。