レーシングゲーム(Xbox360用ゲーム「Forza Motorsport」)を使った興味深い実験があります。
ゲーム内で、異なるブランドペイント(コカ・コーラ、レッドブル、ギネス、トロピカーナ、ブランドなしを含む5種)が施されたまったく同じ性能の車を用意してプレイさせたところ、レッドブルのブランドカーを運転した際にだけ特殊なパフォーマンスが観察されました。
それは1位と最下位になる確率が顕著に高かったということです。
これはレッドブルのブランドがユーザーの視覚的に訴えかけられ、レッドブルに対して彼らが持っているスピード、パワー、そして無謀さというブランドイメージが潜在的に発揮された結果であると報告されています。
味や性能が変わった気がするのは
思い込みが脳をだましているから
これはいわゆる思い込み(プライミング)効果(編集部注/イメージを先に見せられると、それに関連した言葉や行動を選びたくなる効果)の一種と考えられています。
こういった潜在意識に訴えかける個々のプライミング研究の結果をすべて鵜呑みにしてしまうのは危険なのですが、人間の思い込みの力は、プラセボ(偽薬)効果として科学的に証明されているのも確かです。
私たちが自分自身が思っている以上にブランドの影響を受けているのは間違いなさそうです。
レッドブルのブランドスローガンは「翼を授ける("Gives You Wings")」。その翼は、私たちのこころの中にいつのまにか生えていて、行動すら操っているのかもしれません。
さて、ペプシvsコカ・コーラの実験は、その後も発展的な研究が続けられています。
fMRI(編集部注/脳の反応を画像化する技術)による脳活動の計測結果をふりかえると、ブランドを知った状態でコカ・コーラを飲むと、海馬や前頭前野といった領域の活動が大きくなっていました。
企業は海馬と前頭前野に
いいイメージを植えつけてくる
海馬は個人の経験的な記憶を司る領域ですから、「コカ・コーラ」というブランドを見た瞬間に、被験者の脳内にはこれまでの様々なポジティブな記憶(楽しいパーティや爽やかなイメージなど)が蘇ったと考えられます。