この状況では、前部帯状皮質や腹側線条体が活性化し、社会的な葛藤を示す脳活動が生じます。するとどうなるでしょうか?

 こういった自分の評価とグループの評価が一致しない状況を作り出す実験の結果では、多くの被験者がグループに迎合する方向に評価を変えてしまいました。これは社会とのズレから生じる葛藤の脳活動が不快感となって、集団への同調行動を促したものと考えられています。

人気商品というだけで
欲しいと思う心理学的理由

 ヒトは群れで生活してきた生き物なので、集団に取り残されまいとする本能があります。

 バンドワゴン効果という言葉を聞いたことはありませんか?別名、勝ち馬効果や行列効果とも言いますが、多くの人が支持しているものや流行しているものに対して、さらに支持が集まりやすくなる心理現象のことです。

 これは「皆がやっているから自分もやる」という社会的証明を求める同調行動に基づきますが、その効果は絶大です。

 レストランやホテルの予約サイトを見ると「昨日○人が予約しました」なんて表示が出ていますよね。あれもこのバンドワゴン効果を狙ったものです。寄らば大樹の陰。ヒトは常に、何かを拠り所に自分の判断に安心したい生き物なのです。

 ふと街を歩いていると、パン屋さんの前に黒山の人だかり。なんだろうと眺めているうちに行列はどんどん伸びていきます。プラカードを持った店員さんが「本日分、あとわずかでーす!」と叫んでいるのを見て、とりあえず並んで限定のパンを買うことに。あとから来た人が品切れを伝えられて、悲嘆に暮れた顔で帰っていきます。想定外の出費でしたが、なんだか悪くない気分です。

 バンドワゴン効果の根底にあるのは、「皆が持っているのに自分だけ持っていなかったらどうしよう」という損失の恐れです。これをFoMO(Fear of Missing Out)といいます。直訳すれば「取り残されることへの恐怖」となり、「他人が自分よりいい経験をしているのではないか」という不安や焦りのことです。