そのために一番てっとり早いのは、どんな形でもいいので希少性を作り出すことです。タイムセールはもちろん、限定品、先行販売、予約困難、次回入荷未定……。

 その中でもとりわけ強力なのは、品薄がニュースになることでしょうか。

 中東戦争による石油の供給不安が噂になり、トイレットペーパーを求めて皆が殺到、そしてそのニュースを見てさらに皆が買い占める。

 そう、1970年代に発生したオイルショックです。マスメディアが生んだ、もっともバンドワゴン効果を発揮したプロモーションの1つと言えそうです(皮肉です)。

 ここまでの社会現象とはいかなくても「品切れ」のニュースを耳にした商品は気になるものです。

 とはいえ、露骨にやりすぎると品薄商法をしていると揶揄されたりしてしまいます。「あそこはいつも閉店セールをやっている」なんて笑い話になってるお店、身近にひとつはありそうですが、実際そういったお店で買い物をした経験のある方は少ないのではないでしょうか。

 このように露骨に希少性を訴求して衝動買いを促すやり方は、長期的にはブランドを傷つけてしまう可能性が高いですから、あまりおすすめはいたしません。

 それでも、時間的なプレッシャーをかけてセールスをする方法は、相手の前頭前野の働きを弱め、FoMO状態に陥らせることができるので、非常に強力な手法であることは間違いありません。

マイホームの購入ですら
理性的に決められない

 この手法がピッタリの業界を考えるならば、同じ相手に二度売ることが少なく、できる限り高額商品を扱っている業界でしょうか。

 なぜならば、高額であればあるほど代替品が少ないため希少性が必然的に元々高く、そして二度売らないのであれば、その取引で少々ブランドを毀損しても失うものは少ないからです。

 その一例がマイホームの購入でしょう。一般の方は家を何回も買わないですし、そして非常に高額で、かつ2つ同じものというのはほとんどありません。どうですか。希少性による衝動買いを促す条件にピッタリ当てはまっているでしょう?