これらは他の仕事や職場でも十分に応用できる要素です。言い換えれば、専門スキルの「核」となる部分を抽出し、それを別の環境に適応させることができれば、幅広い領域で貢献することが可能になります。

 たとえば、人事職において人材採用業務を担っていた経験者について考えてみましょう。採用面接で自社に必要な人材かどうかを見極めるには、「応募者のスキルレベルを見定める質問力」や「適切なコミュニケーションを通じて真意を引き出す能力」など、経験に裏打ちされたスキルが求められます。

専門スキルを別の領域で
活かすために必要なこととは?

 他にも、面接がうまい人は、応募者の緊張をほぐしリラックスしてもらうための雑談力や、応募者からファクト情報を丁寧に引き出す傾聴力、自社への入社意欲を高める訴求力などが備わっています。

 こうしたスキルがあれば、人事以外の分野でも活用可能です。たとえば、コンサルティング業務では、クライアントの課題を引き出し、それをもとに解決策を提案する場面が多々あります。この場合、人事職で培った「傾聴力」や「情報収集力」は非常に有効です。

 また、営業職やPR業務でも「応募者の関心を引き出し、共感を得るコミュニケーションスキル」は、顧客や関係者との交渉や関係構築において強力な武器となります。雑談力は、営業職で商談の場を和ませる技術に転用でき、相手の心をつかむ一助となります。

 このように、専門スキルを別の領域で活かすためには、スキルを分解し、その構成要素となるポータブルスキルを理解することが肝要です。

 たとえば、エンジニアのプログラミングスキルは、単にコードを書く能力にとどまりません。その背後には、論理的思考、問題解決能力、アルゴリズムの理解といった要素が含まれています。

 デザイナーのスキルならば、美しいビジュアルをつくるだけでなく、情報を整理し、直感的に伝える設計力、ユーザーの心理を考慮したUX(ユーザーエクスペリエンス)設計、ブランドの世界観を形にする表現力などが求められます。これらは、プロダクト開発やブランディング、さらにはプレゼン資料の作成といった場面でも応用できるはずです。