こうした異なる分野での成功を支えるのは、観察力、好奇心、そして学び続ける姿勢といった普遍的な能力、すなわちポータブルスキルです。ダ・ヴィンチの例は、こうした能力の持ち主であれば、異なる分野に挑戦し、それぞれで新たな視点を持って成功することができることを教えてくれます。これは、ビジネスや現代のキャリア構築においても大いに参考になるでしょう。

 このように、専門スキルを分解し、構成している要素を洗い出せば、別の領域でも応用できるスキルに気づけるでしょう。これが、どこでも通用する人材になるための第一歩です。

自分からアピールしないと
評価が得られない時代

 ただ、ポータブルスキルや転用可能な専門スキルを持っているだけでは、新しい仕事や環境でそれを発揮するのは容易ではありません。

 新しい職場には、もともとその環境、その領域で頑張り成果を上げてきた人がすでにいます。まだ実績のない「よそ者」にすぐチャンスが回ってくるケースは少なく、実績のない「よそ者」が評価されるまでに時間がかかるため、評価もされづらいのは仕方のないことです。

 そのため、どこでも通用する人材になるためには、「自分が能力を持っている」と周囲に証明し、認めさせる力も非常に重要です。

「新しい環境に入ったばかりなのに、能力をアピールするのは気が引ける」という人は多いことでしょう。とくに若手の場合は「若手の分際で“自分はできる”とアピールするのはおこがましい」と思う人のほうが多いかもしれません。

 しかし、自分からアピールしないことには、自身の能力は理解してもらえません。その結果、自分の能力に合わない仕事ばかり回され、力を発揮できず、そして、成果も上がらず評価もされない……という悪循環に陥る可能性もあります。

 とくに日本の文化では、「陰徳を積む」「縁の下の力持ち」「影の功労者」などという言葉があるように、日本人には「地道に頑張れば必ず誰かが見ている」という美徳が信じられています。

 しかし、働き方改革やリモートワークの増加で、オフィスで時間をともにする機会が減っている今、自分から積極的にアピールしないことには、いくら能力があっても正当な評価が得られにくい時代になっています。