事務職のスキルも単なるデータ入力や書類整理にとどまりません。業務を円滑に進めるための段取り力、細かなミスを防ぐチェック能力、関係者との調整をスムーズに行なうコミュニケーション力など、多くの要素が含まれています。これらのスキルは、プロジェクトマネジメントやカスタマーサポート、さらにはイベント運営などの分野でも活かすことができるでしょう。
「ポータブルスキル」を駆使した
レオナルド・ダ・ヴィンチ
このように、自分のスキルを分解して考えてみると、「意外と別の領域でも活かせるかもしれない」と感じるものがきっと見つかるはずです。
これらの要素を抽出し、応用の視点で考えると、新しい環境でも適用可能なポータブルスキルへと変化します。
このプロセスは、心理学の「転移学習(Transfer learning)」にも似ています。転移学習は、新しい場面において、過去の学習や経験から得た知識を活かすプロセスを指します。同様に専門スキルも、その要素を分解し、新しい状況に適応させることで応用可能となります。
そもそも現代においては、それぞれの領域が細かく複雑になっているので「専門化」が進んでいますが、大昔は多くの偉人が「万能の人」でした。それもこれも、どの専門領域においても通用するベースとなる力があったからではないでしょうか。
たとえば、有名なレオナルド・ダ・ヴィンチは、画家として「モナ・リザ」や「最後の晩餐」などの名作を残した一方で、発明家、科学者、解剖学者、数学者、音楽家としてもその才能を発揮しました。
ダ・ヴィンチの成功の背景には「観察力」や「探究心」など、各領域で活きる共通した能力があったのでしょう。彼は自然界や人間の体を詳細に観察し、そこから学んだ知識を絵画の技法や発明に活かしました。たとえば、解剖学の研究は絵画にリアルな人体描写をもたらし、空気力学の研究は飛行機械の設計につながりました。