「そりゃ強くなるわ…」幕末の日本に学ぶ、会社の危機を救う“歴史”という羅針盤
仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。待望の続編『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、世界史のリーダー35人が、迷える現代のリーダーに【決断力】【洞察力】【育成力】【人間力】【健康力】という5つの力を高めるヒントを伝授する。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

あなたの会社の社史に眠っている! 意外な「成長DNA」の見つけ方Photo: Adobe Stock

過去に学び、未来を創造する

歴史を学んでいると、歴史を継承して未来を創造するという場面に出くわすことがあります。

いちばんの典型は、幕末の日本です。

国難を乗り越えた、幕末日本の「歴史の参照」

当時は幕府のほかに300もの藩に分かれており、また海外に対してほぼ国を閉ざした状態にありました。

その状態で長らく平和な時代を過ごしてきたのですが、ペリー来航(1853年)をはじめ、西洋諸国が来航するようになり、侵略される恐れが生じてきたのです。

そうした危機に対応する国のかたちが模索され始めたのですが、そこで日本の歴史を振り返る動きがありました。

かつては天皇を中心として国が1つにまとまっており、古くは遣隋使や遣唐使に代表されるように中国などから学んだ歴史がありました。

西洋諸国に対抗する国づくりとして、天皇を中心に国を統一し、海外から学んで国を強くするという理想が幕末に生まれ、明治時代に実現するのです。

企業の羅針盤は、その歩みの中に

歴史を振り返ることで未来のかたちを創造するというのは、国に限らず、会社でも活用できます。

会社の歴史を振り返ると、その会社が大事にしてきた考え方や、会社が成長したとき、または厳しい状況に陥ったとき、どのようなとり組みをしてきたかを知ることができます。

そのなかに組織が目指すべき未来のかたちのヒントがたくさんあるのです。

社史に隠された「成長のDNA」

私は依頼をいただいてコンサルティングをするとき、クライアント企業のこれまでの歴史を知るところから始めます

そして、社史を読んだり経営者の話を聞いたりすればするほど、未来のかたちのヒントとなるものがたくさんあることに気づかされます。

排水処理の薬剤に強い化学品メーカーのコンサルティングを担うため、その社史を振り返ると、その成長期には外部からの技術支援を受けていることがわかりました。

内部志向で閉鎖的になることなく、外部から積極的に知恵を得ようとするのが、この企業の強みであり、次世代にも継承すべきDNAであることを社史から感じたのです。

創業者の「想い」こそが企業の原点

一方、接着剤の販売代理店として成長してきたある老舗商社では、創業者が「きれいな化粧板(家具などで使用する板)に釘を打ちたくない(釘を打つと見栄えがよくないため)」という想いから接着剤をとり扱うようになった経緯がありました。

そうした創業者の想いを現在の経営者が受け止めて、業容を拡大しました。具体的には、接着剤の商社事業に加えて、建設資材の商社事業や空間全体の見栄えをよくする内装工事事業、さらに海外事業まで、M&Aによって拡大しています。

ちなみに、創業者の想いを踏まえた同社の経営理念は「釘を打ちたくない」です。

歴史は、未来を照らす羅針盤

この2社の例に限らず、会社の歴史には未来のかたちのヒントになるものが本当にたくさんあります。

会社の歴史を振り返るというと、過去の事業をひたすら守り続けることにならないかと懸念する人がいるかもしれません。しかし、私は逆だと思っています。

会社の歴史を振り返ることで、「環境の変化に合わせて事業を変えていかないといけない」ということに気づくからです。

変化こそが、存続の証

長い年月を乗り越えて存続してきた会社ほど、時代の変化に合わせて柔軟に変化してきています。会社の歩みのなかにある「変化」に気づけば、次なる変化への気づきにもつながるのです。

みなさんにも一度、自分が勤める会社の社史をたどってみることをおすすめします

そこには自分が強みを発揮できるヒントが埋まっているかもしれません

※本稿はリーダーは日本史に学べ(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。