これでは、自らが不調になる予言をしているも同然だ。翌朝は疲れているはずだと自分に言い聞かせるようなことをすれば、疲れを感じるように仕向けていることになる。疲れをとるには8時間眠らなければならないと信じていれば、それより少ない時間では回復できない。
では、思い込みを変えてみたらどうなるだろう?
心と身体のつながり(または科学者が「生物心理社会パラダイム」と呼ぶもの)についての基本的な理解を深めることが、ますます有益になっている。脳と身体は神経経路でつながっていて、身体の不調は身体の機能だけでなく、心理や人間関係などの環境ともつながっているのだ。
数年前、有名ながん外科医でベストセラー作家のバーニー・シーゲル博士にインタビューする機会があった。
彼は、40年以上のキャリアで治療した何千人ものがん患者のうち、ほぼすべての生存者に共通していたのは、その人たちの考え方、とくに「絶対に治る」という信念だったと語った。たとえ確率が不利であったとしても、サバイバーたちは「生き延びる」という揺るぎない信念を持ち続けていたのだ。
また、致命的ではないがんを患っている患者でも、治ると信じることをあきらめた場合、残念ながら生き延びられなかったケースがあるという。
たとえ同じ睡眠時間でも
思考が変われば目覚めも変わる
科学的研究と、他の人たちの多数の経験、そして僕自身の経験から、精神力を使って身体の不調を克服できる可能性があるなら、同じ精神力によって睡眠の質や朝の気分に影響を与えることもできる――と僕は考えている。
この仮説を検証するために、さまざまな睡眠時間を試してみた。短くて4時間、多くて9時間だ。実験は、睡眠時間と朝の気分についての「思考」を変えて行った。まずは、「睡眠時間が足りないので朝起きたら疲れているだろう」と寝る前の自分に言い聞かせてみた。すると、それが現実となった。
4時間の睡眠の後、目覚めると疲れていた。
5時間の睡眠の後、目覚めると疲れていた。
6時間の睡眠の後、もうおわかりだろう――疲れていた。