謝罪役の野呂圭介自身もたびたび騙されていたが、1980(昭和55)年10月16日には「今後1年間、俺は絶対騙されない。もし騙されたら、銀座の歩行者天国を赤フンドシで歩く」と宣言、しかしやはり騙されてしまい、本当に銀座をヘルメットに赤フンドシという恰好で歩くハメになった。

 当然、これも通報されて野呂は警官に両脇を挟まれ拘束されたのだが、恐ろしいことにこの様子も全部そのまま放送されたりしていたのである。

『不適切な昭和』書影『不適切な昭和』(葛城明彦、中央公論新社)

 他局でも『いたずらカメラだ!大成功』(1976〈昭和51〉年~1977〈昭和52〉年:テレビ朝日)、『スターどっきりマル秘報告』(1976〈昭和51〉年~1998〈平成10〉年:フジテレビ)など類似の番組が次々に出てきたが、やはり過激さで『元祖―』にかなうものはなかった。

 現在もドッキリ番組は放送されているが、警察が出動するような企画を出すことなど到底不可能となっている。一般の素人や通り掛かりの人を巻き込むこともあり得なくなり、現在は騙される側の人たちも、実はほとんどがその局と契約している劇団の団員たちである。

 ネタも、「仕事先で初対面の人に失礼な態度を取られたら」「芸能人が変装して一般人の前に出たとしたら、バレるかバレないか」など、ハッキリいってしまえば毒にも薬にもならないような薄い内容ばかりだ。やはり、ホンモノの「ドッキリ」は、時代が昭和でない限り絶対に生まれなかった番組だといえるのだろう。