「あの店に行けば本が見つかる」と
思わせる仕掛けが必要な時代に
たとえば、理数系に特化した古本屋があります。理数系の専門書だけではなく、理数系に関係する絵本や小説まで並んでいます。さらに生物や土壌に詳しくなれるよう、顕微鏡まで覗ける徹底ぶりです。こうなると、古本屋という1つのコミュニティといえるでしょう。
といっても、これは理数系だけが生き残るという話ではありません。大手のチェーン店に勝つには、何か尖った特徴を打ち出し、好みの合致したお客と密接になってリピートしてもらうしかない、という話です。
そしてジャンルごとに「あの店に行けばきっと見つかる」という期待感を持ってもらうことが必要です。
今のネット社会では古本をただの商品ではなく、「文化や歴史の一部」として扱い、珍しい装丁や絶版書籍などを取り揃えることで、「この店に来ればただの買い物以上の価値が得られる」という付加価値を訴求していかねばなりません。
さらに、特定のテーマで書店の区画を貸し出し、本の目利きたちが書籍を販売する試みもあります。
たとえば「植物」をテーマにした本を持ち寄って、本を選ぶだけではなく、お客同士の交流も促進するものです。
また、本をいくらでも読めるというコンセプトで「泊まれる本屋」という取り組みもあります。宿泊しながら、大好きな本に囲まれて過ごすことができます。
書店そのものでは儲からないかもしれませんが、蔦屋書店がスターバックスを併設するような取り組みを行う個人書店版はありうるでしょう。
つまり「この店でしか味わえない魅力」を感じられるような工夫の継続が求められるのです。それこそが、大手チェーン店とは一線を画す個性となり、お客との長期的な信頼関係を築く鍵です。
仕事で使うだけのハンコを
嗜好品に昇華させてバズらせる
では、ハンコ屋はどうでしょうか。
ハンコを使う機会は着実に減っています。会社では電子印、個人でもマイナンバーカード、または生体認証などが広がり、今後もさらに広がっていくのは確実です。
とすれば、生き残るにはハンコという商品の位置づけを変えるしかありません。嗜好品としての新しい魅力に気付いてもらうのです。